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特別展「地獄絵ワンダーランド」三井記念美術館(2017/8/18)

2017-08-21 22:09:18 | Weblog
熊野観心十界曼荼羅(日本民芸館所蔵、江戸時代)が興味深い。


①「心」の文字と結ばれた十界の世界、人の一生を表す老いの坂、地獄、亡者を救済する施餓鬼供養など、さまざまな図像がある。
②熊野比丘尼が絵解きに用いたこの宗教絵画は、近世社会で代表的な地獄絵。現在60点ほど残る。
③「十界」は、悟りを開き煩悩のない「四聖シショウ」(声聞ショウモン、縁覚エンガク、菩薩、仏ブツ)と、苦しみに満ちた「六道」(天、人、修羅、畜生、餓鬼、地獄)からなる。
④日輪と月輪のもと、中央に大きな山。山の頂のすぐ下に阿弥陀如来と諸菩薩の「仏界」と「菩薩界」。山の右端には「声聞界」、左端には「縁覚界」。
⑤その間が「天道」。
⑥山には、「人道」が人の一生で示される。ふもと右側の建物で出産。乳児は鳥居をくぐり、少年から青年へと成長。山の頂の少し前、女性とそれに応える男性。結婚。やがて人生の折り返し。夫婦は坂を下り、老いていく。ついに鳥居をくぐり、死を迎える。「生老病死」を描く。
⑥-2 山の樹木は、幼少期に梅、青年期に桜、壮年期に松、頂を越えたところに紅く色づいた楓、老年期に雪の積もる樹木。人の一生を示す。
⑦一生を終えた男は、三途の川を渡り、奪衣婆に衣をはぎ取られる。衣は樹木に掛けられて、生前の業(罪)の重さが測られる。さらに「業秤(ゴウノハカリ)」によっても罪の重さが測られる。ささいな罪も見逃がされず、たいていの人は有罪とされ、苦を受ける。
⑧四つの苦しみの世界がある。修羅道(常に戦いをする)、餓鬼道(常に空腹だが何も食べることが出来ない)、畜生道(動物として苦役を受ける)。さらに罪の重い者が、地獄へ堕ちる。
⑨平安時代、源信が記した『往生要集』は、地獄が八つの階層から成ると述べる(八大地獄)。針の山(剣山)、舌を抜かれたり、岩で押しつぶされたり…
⑩この絵は、地獄とともに、救済法も描く。それが、画面の中央の施餓鬼供養(お盆の先祖供養)。この供養により、地獄に墜ちた亡者も(一時的に)責め苦を逃れ、運が良ければ地蔵菩薩によって三途の川を逆戻りできる。