季節を描く

季節の中で感じたことを記録しておく

“国立トレチャコフ美術館展”(Bunkamura ザ・ミュージアム:2009.5.03)

2009-05-04 14:55:49 | Weblog

  渋谷はいつもにぎやか。日曜日の午後。渋谷駅から歩いてBunkamuraへ向かう。国立トレチャコフ美術館展を見る。
 第1章 叙情的リアリズムから社会的リアりズムへ  
 ロシア風景画の創始者の一人、レフ・カーメネフ「冬の道」(1866年、5)はくらい厳しい冬を描き小品だが傑作である。アレクセイワシーリー・ペローフ「鳥追い」(1870年、7)は鳥を捕まえようとわなを仕掛け、緊張して鳥を待つ老人と子供が描かれ迫真的。ペローフは以後、庶民の日常の喜びを題材とする           


 第2章 日常の情景
 ウラジミール・マコフスキー「愛の告白」(1889-1891年、16)は見ていて楽しくなる絵。愛を告白した男はとぼけた表情を見せ女は平静を装う。本人たちには緊張の一瞬のはずが傍目にはコミカルに映る。

 第3章 リアリズムにおけるロマン主義
 フョードル・ワシリーエフ「雨が降る前」(1870-1871年、21)は黒く暗くなった空と一筋の陽光のもと明るく照らし出された情景とが鮮やかに対比され印象的である。ワシリーエフは天才的若者と呼ばれるが23歳で夭折する。アルヒープ・クインジ「エルブルース山、月夜」(1890-1895年、30)は山が光を浴び神秘的に浮かび上がる。エルブルース山はカフカス山脈にあるヨーロッパで最も高い山。クインジは“光の詩人”と呼ばれた。
 第4章 肖像画
 イワン・クラムスコイ「忘れえぬ人」(1883年、39)はトレチャコフ美術館で最も人気の高い絵である。女性は誇り高く描かれている。誰かは不明。クラムスコイは官立美術学校に反抗した移動展派のリーダーである。1871-1923年に48回の移動展が開催された。

                                 

  ニコライ・ゲー「文豪トルストイ」(1884年、40)が描くのはモスクワの屋敷で仕事に取り組むトルストイである。緊張感が漂う。                                    


 第5章 外光派から印象主義へ
 ワシーリー・ポレーノフ「モスクワの中庭」(1877年、46)はモスクワが持つのどかな田舎の側面を感じさせる。中景の教会の塔が街の賑わいを思い起こさせる。

                                    

 イワン・シーシキン「陽を浴びる松」(1886年、51)は陽の光がとてもリアルで鮮やかである。ニコライ・カサトキン「女鉱夫」(1894年、59)はウラル地方、ドネツク炭田での作品で女性の少しはにかんだ笑顔が魅力的である。ヴィクトル・ボリソフ=ムサートフ「五月の花」(1894年、60)のたくさんの白い花は鮮やかである。

   コンスタンチン・コローヴィン「魚」(1917年)は大胆で大きなタッチがダイナミックな印象を与える。
 いずれも穏やかなロシアを思い起こさせる絵だった。心和む展覧会である。渋谷の午後、日曜日は相変わらずの賑わい。歩いて渋谷駅へもどる。