季節を描く

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「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」(Bunkamura ザ・ミュージアム )2011.3.21

2011-03-22 00:57:53 | Weblog
 1600年代のフランドル絵画が並ぶ。フランドルは北がプロテスタントのオランダ、南がカトリックのベルギーにほぼ相当する。(オランダは1581年にスペインに対し独立宣言。1609年、新生オランダとスペイン王間に12年間の休戦が成立。1621年、戦争が再開されるが大きくならず。1648年、ウェストファリア条約でオランダの独立が国際的に承認される。)

 ヤン・ブリューゲル(子)「楽園でのエヴァの創造」(1630年代後半)は不思議な絵。アダムの肋骨から作られたエヴァがアダムの胸からまさに生まれてくる絵。神がエヴァの誕生を助け受けとめている。
            
 フェルディナント・ファン・ケッセルに帰属「ネズミのダンス」(1690年頃)のネズミたちが楽しそう。生き生きしている。“猫がいないとネズミが踊る”とフランドルの諺。姑がいないと嫁はどこの国でも気楽。

 ペーテル・パウル・ルーベンスとヤン・ブックホルスト「竪琴を弾くダヴィデ王」(1616年頃・40年代後半)はルーベンス工房の作品。人気が有ったルーベンス工房が大量の注文をこなすため、ルーベンス自身が描いたのは顔と肩のみ。

 レンブラント・ファン・レイン「サウル王の前で竪琴を弾くダヴィデ王」(1630-31年頃):武功をあげた若きダヴィデをサウル王は警戒する。しかし竪琴の魅力的な音色につい心が惹かれる。サウル王の両義的な心を彼の表情が示す。
                 
 ヨハネス・フェルメール「地理学者」(1669年):フェルメール37歳の作品。光が明るく鮮やか。スペインの支配から独立をとげた新興国オランダが17世紀、海の覇権を握る。地理学は貿易大国オランダの航海に必須である。この絵は一種の風俗画。
             
 ヘラルト・デル・ボルヒ「ワイングラスを持つ婦人」(1656-57年):テーブルの上には手紙。おそらく恋文。彼女は思案する。ワインを飲まずにいられない。
                
 ヤン・ステーン「宿屋のお客と女中」(1665年頃):客が女中に絡み口説く。風俗画。消えたランタンが描かれる。知性がないことの寓意。

 ダーフィット・テニールス(子)「居酒屋でタバコを吸う男」(1659年頃):タバコが16世紀末頃、ヨーロッパに伝わる。テーブル上にはビールがある。タバコとビールは悪徳を示す。

 ヤン・ブリューゲル(父)の工房「ガラスの花瓶に生けた花」(1610-25年頃):素材のひとつひとつの花また花瓶は現実のもの。しかしその組み合わせは空想の産物。花の季節が異なる。花瓶が小さすぎ丈の高い花が現実には倒れる。花瓶に生けた幻想の花々。
                
 コルネリス・ド・ヘーム「庭の欄干の前の野菜と果物のある静物」(1658年):とうもろこし、ねぎ、メロンなどの側にブルー&ホワイトの中国製陶器がある。大航海時代の富裕な商人のステータス・シンボルが中国製陶器だった。

 ヤン・ウェーニックス「死んだ野兎と鳥のある静物」(1681年):狩猟は貴族の特権。オランダの富裕な大商人が貴族の気分で狩猟の獲物を描いた静物画を飾る。
                 
 ルーカス・ファン・ファルケンボルヒ「凍ったスヘルデ川とアントワープの景観」(1593年):凍った川でスケートに興じる人々。しかしこの絵を買ったのはスペインとの戦争で亡命したプロテスタントのオランダ人。故郷を懐かしむ絵。
                 
 ウィレム・ファン・ド・フェルド(子)(工房共作)「穏やかな海」(1660年頃):描かれているのはオランダ東インド会社の貿易船。それは武装商船。決して穏やかでない。彼は評判の風景画家でイギリスのチャールズ2世に招かれ暫くイギリスに滞在。当時、宗教画・歴史画とは別に風景画のジャンルが成立した。

 ヘンドリク・ファン・フリート「デルフトの旧教会の内部」(1660-63年頃):デルフトはフェルメールの出身地。彼はこの教会に埋葬された。