国宝「花下遊楽図(カカユウラクズ)屏風」(狩野長信筆・江戸時代・17世紀)が楽しい。左隻(サセキ)では、花咲く白い海棠の木の下で八角堂に坐り、貴公子(赤い着物を着て扇を手にする子ども)とその一団が風流踊りを眺める。中央の女性たちが、足裏を見せ踊る描写は、まるでストップモーション。右の一団は刀をもって踊る男装した美女たち4人。最新のモードに身を包み、目にきりりとアイラインを引く。流行の阿国歌舞伎を写したものだろう。縁側に座る人々も思わずリズムをとっているのか足裏をみせる。幔幕の黒色は銀が黒変したもの。着物にも銀が多用されている。当初の画面はもっと白く明るかったはず。お堂の縁の下には、居眠りしながら待つ駕籠かきがいる。花見を楽しむ人々の、その一瞬を捕らえた作品。季節を愛で、春を謳歌する。(※関東大震災で右隻中央の2扇焼失。当初の画面はモノクロの写真でのみ確認できる。)
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