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“国宝 土偶展”(東京国立博物館:2010.1.27)

2010-01-27 23:32:39 | Weblog

  1月の上野公園、午後3時すぎ、東京国立博物館を訪れる。風が冷たい。本館で“国宝 土偶展”を見る。 
               

 A 縄文時代早期(前7000-前4000年)
 
 「発生期の土偶」(2、茨城県)は何と今から6000年以上前の土偶である。7-8cmくらいの大きさで頭も手足もないが女性と分かる。バイオリン型土偶と呼ばれる。ちなみに土偶はすべて女性である。
 
 B 縄文時代中期(前3000-前2000年) 
 
 「十字型土偶」(4、青森県三内丸山遺跡)は4000年以上前のものである。頭と胴が90m離れた場所から見つかる。おそらく身代わりまたは再生を願って土偶を壊したと思われる。

                 

 「子供を抱く土偶」(10、東京都八王子)は母親と乳児のリアルな姿を示す。今と何の変わりもない姿で4000年以上前でも母子の親密な関係が同一なのだと感慨深い。

 この時期を代表する国宝の土偶が「縄文のビーナス」(39、長野県茅野市)。妊娠した女性の像でふっくらとしている。お尻が極端に大きく「出尻(デッチリ)土偶」と分類される。

             

 「有孔鍔付土器」(48、山梨県)は大型の容器である。その側面に女性の躍る姿が土偶ふうに描かれ眺めていて愉快。

           

 「土偶把手付深鉢形土器」(44、神奈川県)もこの時期に属す。鉢の縁の上に土偶がつく。それが鉢に盛られた食物の豊饒を祝福するかのようである。

 C 縄文時代後期(前2000-前1000年)

 「ハート型土偶」(16、群馬県)は顔の形からの命名。素朴でほほえましい表情が有名である。乳房があり女性と分かる。

                 

 「しゃがむ土偶」(26、福島県)は祈りの姿と言われる。前2000-前1000年に環境変化が起こり、海山から得られる食料が減る。自然の豊饒を求めて祭り・儀式が盛んになる。

        

 国宝の「合掌土偶」(40、青森県八戸市)もこの時期のもの。かつて全身が赤く塗られる。割れたことがありそれを天然のアスファルトで接着し大切に祀られていたと思われる。

              
 
 国宝「中空土偶」(41、北海道函館市)は肩、腰、脚の模様が装飾的で美しい。全身に黒漆が塗られていたという。

                 

 D 縄文時代晩期(前1000-前400年)

 「遮光器土偶」(32、青森県亀ヶ岡遺跡)は宇宙人を思わせる有名な土偶である。イヌイットが使うサングラス(遮光器)のようなものをかけていると最初考えられた。しかしどの遺跡からも遮光器は見つからず今はめがデフォルメされたとされる。

                  

 E 弥生時代前期(前4-前3世紀)

 この時期の「土偶型容器」(62、神奈川県)は土偶が骨壷へと変化したことを示す。容器の中には幼児の骨があった。幼児を胎内に戻し再生を願ったと思われる。

 F 弥生時代中期(前2-前1世紀)

 「土偶型容器」(62、神奈川県)もまた土偶型の骨壺である。

 前4000年にすでに生まれていたバイオリン型土偶に始まり、縄文時代にわたって続いた土偶の歴史は弥生時代に骨壷として終わる。

 土偶ってこんなにたくさんの種類があったのだと感心する。国立博物館本館の外に出れば夕刻。上野公園は木々の陰が暗くなり始めていた。上野駅まで歩く。

 


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