季節を描く

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“愛のヴィクトリアン・ジュエリー展”(Bunkamura ザ・ミュージアム:2010.1.04)

2010-01-05 17:18:21 | Weblog

 2010年の正月。渋谷は若い人で賑わう。『不思議の国のアリス』(1865年)、『鏡の国のアリス』(1871年)の時代であるヴィクトリア朝の宝石をBunkamuraに見に行く。

 イギリスのヴィクトリア女王(1819-1901)は18歳で女王となり(1837年)その後81歳(1901年)まで在位。「若き日のヴィクトリア女王」(1、1842年頃)はドイツのアルバート公と1840年に結婚した直後のもの。指に結婚指輪をする。指輪の交換はドイツの風習であったが、女王の結婚式以後イギリスでも行われるようになった。

                       

 「ピンクトパーズ&カラーゴールド・スウィート」(7、1830年頃)はイギリスがまだ植民地を拡大する以前で金が高価だった時代のものである。カラーゴールドは金と銀・銅などとの合金。ピンクトパーズが美しい。

               

 「リガード・パドロック・ペンダント」(13、1820-30年頃)はメッセージ・ジュエリーである。宝石の頭文字がメッセージを伝える。ルビー、エメラルド、ガーネット、アメジスト、ルビー、ダイアモンドと並べREGARD(敬愛)を示す。

                    

 「ターコイーズ&ゴールド・ブローチ」(16、1830年頃)は鳩が忘れな草を加えて飛ぶ。鳩は精霊の象徴であり聖化された愛が示される。青いターコイーズ(トルコ石)が魅力的である。

                          
 
 「シードパール・ティアラ」(36、19世紀初期)には「芥子」と呼ばれる小さな真珠、シードパールが無数に使われる。清楚で少女に似合う。スプリングがついた真珠の薔薇が揺れてかわいい。

                   

 「エナメル・ミニアチュール・セット」(46、1868年)はエナメル製でキューピッドの細密画(ミニアチュール)が精緻に描かれる。

 「ハードストーンカメオ&エナメル・ペンダント」(70、カメオ:19世紀初期、フレーム:1870年頃)はアキレウスのカメオが精悍で鋭利に彫られ見事である。縞瑪瑙の模様が神の意思の現れとされカメオは護符となる。

                

 見飽きることがないほど精巧でまた多くの色どりを示すのが「ローマンモザイク&ゴールド・ブローチ」(85、19世紀中頃)である。黒いガラスに半貴石が嵌め込まれたモザイクで表面が平らに磨かれている。当時、貴石の色は2万色以上あったという。

          

 「ピクウェ・バックル」(99、19世紀中頃)が美しい。ピクウェは黒い鼈甲に金・銀を象嵌する技法である。最初はフランスのユグノーが聖職者に献上した箱などに使われた。

 「アイボリー・ブローチ」(102、19世紀中頃)は“薔薇を持つ手”の彫像である。真の友情が象徴される。これは19世紀前半、ヴィクトリア朝のロマン主義が好んだ題材である。

 「ブルーエナメル&ゴールド・ネックレスは」(146、1865-70年頃)はアンティーク・ジュエリーの4大要素、ゴールド、ダイアモンド、パール、ブルーエナメルからなる。ハートのペンダントが豊満。ブルーエナメルの青とゴールドの対照が鮮やか。ネックレス部分のみずからの尻尾を飲み込む蛇は永遠を示す。永遠の愛が象徴される。

                

 「チャールズ1世のモーニング・スライド」(153、1650年頃)(ゴールド、遺髪、エナメル)はピューリタン革命期に属する。処刑された王の遺髪を水晶で覆ったモーニング・ジュエリーで王党派が身につけた。

 「ジェット・ブローチ『ベラドンナ』」(255、19世紀中頃)は魔除の花ベラドンナが妖しい。ジェットは化石化した樹木であり“黒い琥珀”と呼ばれる。アルバート公の死後25年間喪に服したヴィクトリア女王の宝飾品にはジェットが多く使われた。

          

 約2時間、ヴィクトリア期のイギリスを体験する。ロマン主義の時代らしくジュエリーは多くが愛、友情、信頼、哀悼の表現である。ウェットな時代からドライ(?)な現代の渋谷に戻り駅へと歩いていく。


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