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金GOLD:黄金の国ジパングとエル・ドラード展(国立科学博物館)

2008-08-03 10:59:42 | Weblog

 上野の国立科学博物館へ行く。この日も暑い。上野公園の木陰が救いだった。

 日本・コロンビア外交関係樹立100周年記念のこの特別展は、自分が見た限りで分類するとⅠ金の特性、Ⅱ日本の金、Ⅲコロンビアの金、Ⅳ現代の金、4本立ての展示だった。

 Ⅰ金の特性では①金鉱を探すときは紫の霧を見つけるとの指摘が面白い。金の蒸気は紫なのだという。それを見せる装置もあった。②オーストラリアの自然金、最大のものは75キロ。模型があった。1グラム3000円として1キロ300万円だから75キロは2億2500万円である。現在、世界2位の自然金、ニューモント・ノルマンディー・ナゲット25キログラムが実物の展示だった。 ③金は重い。1000立方センチ(1リットル分)の金塊が19.3キロ、20リットルポリタンク1杯の石油に相当する。実際に触ることができ重くて持ち上げるのが大変だった。銀10.5、銅8.9、アルミ2.7も塊を持ち上げて比較できて良かった。(なお鉄は7.8である。)

  Ⅱ日本の金:①北海道に明治30年代、ゴールド・ラッシュがあった。最大760グラムの自然金が見つかったという。砂白金の実物が興味深かった。

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 ②国宝が展示されていた。金銅製棘葉形杏葉(コンドウセイ・キョクヨウケイ・ギョウヨウ)で藤の木古墳出土、鞍の付属品。緑青が取り除かれ金色が輝く。

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 ③興福寺の鎮壇具も国宝。金塊・砂金・延金(ノベキン)が建物の守護のため埋められたという。④金字の経典の作り方について説明がされていた。金泥(ニカワ+金粉)で字を書いたあと猪の牙で磨くと金色に光る。⑤668年天智天皇創建の崇福寺の舎利容器も国宝。金・銀・銅の箱に順に舎利が入れられていて愉快。⑥奥州藤原氏が1.7トンの金で買った宋版一切経がある。この藤原氏の黄金の文化が日本を黄金の国ジパングとマルコポーロに呼ばせたのかもしれない。

 ⑦秀吉、黄金の茶室の復元があったが金箔張りであって障子の桟が金無垢でないのが残念だった。

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 ⑧聚楽第跡出土の金箔瓦(重文)はなかなかすごい。

 ⑨江戸時代の大判5種類、小判10種類の展示は楽しい。慶長小判は金15.0グラムを含むのに対し元禄小判は金10.2グラムとひどい。ともに小判の重量は17.9グラムである。

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 Ⅲコロンビアの金:①コロンビア黄金博物館には200BCからAD1600までの金製品が収集されている。インカでは太陽信仰のもと金は「太陽の汗」と呼ばれた。エル・ドラード伝説の発祥地はコロンビア。ボゴダ郊外のグアタビータ湖での宗教儀式では体を金にぬった首長が金の奉納物を湖に沈めたという。エル・ドラードとは黄金の人の意味である。②金製の鳥型ペンダントがたくさんある。シャーマンはトランス状態の中で宇宙の異次元に入り込み鳥として飛行しすべてを見、すべてを解き明かす。そもそも人間と動物は入れ替わり可能とされた。とりわけシャーマンは鳥の飛行、ジャガーの力、コウモリの視力を生きながらに獲得する。

 ③コウモリ男のペンダント(金製)はシャーマンの変容の様子を示したもの。

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 ④金製品の主要な種類は耳飾り・鼻飾り・ペンダント・胸飾りである。半人半獣像が多い。

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 ⑤変わったところでは石灰用容器(金製)があった。コカの葉の即効性を引き出すための石灰をいれる容器。長い棒がついた蓋を持つ。

 Ⅳ現代の金:①世界の金の生産量は年間約2500トン。銅約1300万トン、鉄約7億トンと比べると非常に少ない。②北島康介のアテネ・オリンピックの金メダル(実物)がある。オリンピックの金メダルは銀に金メッキだが、ノーベル賞のメダルは18Kの無垢である。これも本物が展示されていた。③人間国宝、江里佐代子作品の截金(キリガネ)細工は精緻。截金(キリガネ)は玉虫の厨子にも見られる技法である。

 金に関して多方面からの展示だった。

 科学博物館をでればまだ午後の日差しが強く空気は暑い。それでも上野公園の人出は多かった。


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