舞台に立つ者は意識が、飛ぶらしい。
舞台の輪郭が、当時の人間に堪える、と。
赤い、化学繊維製の絨毯が敷かれている。
鯛、独立の儀の他の演目は、“舞妓、そぞろなりにて、のほほん顔と挙げし両手が左右揺れ”、“舞妓、金のカンザシの揺れを知らずのまま、両腕と、両手指、はんなりと愛想笑い合戦、顔は銀のカンザシ探し”等。(そぞろなり、何となしに)
月が転送してきた図鑑に載っていた恐竜の顔が真ん中で深く割れている氷像、高さ四・一米。
襲うばかりで馬鹿野郎、と顔のみで彫師が断定した、らしい。
下で氷柱が支えており、かつ斜めに走る透明の紐で吊られている、亀、独立なる氷像、高さ三・七米。
結跏趺坐けっかふざ、中の舞妓、高さ二・七米の首がろくろ首で、頭を禅定印ぜんじょういん、の上で斜めに抱いており、そこでのほほん顔。
蛇の下顎がやたら太く、カエルが如く像は尾を跳ね上げており、高さ七米。
恵比寿の腰巻が、イノシシの胸より上で、鬼滅の刃の伽羅ごたる像は高さ二・四米。
服を着た象の像、高さ三米、鼻を跳ね上げ中。
金太郎飴に見えるアニメ調の顔を灯す舞妓、二・二米。
これは全く現代のアニメ調のそれで、つぶらな瞳、三角の口。
神戸に伝わる武将が甲冑姿で馬に乗り威勢良く駆け出そうとしているが、まとうしつらえ全ての性別が反転しようとしている所以が、武将の顔の知徳の足りなさに有りと唱えている。
ねおは武将を好かずだった。
一・九米大のこれは、注視の次に巧妙な侮蔑を浴びていた。
この手は、好む事業と化していた。
背後は民度上の余力。