理由は、資源をもらっておきながら対価を払わなかったからだと考えた。
しかし実態は違った。
本当の理由は、私たちが自分より弱い異星人に対しいつも傲慢に振る舞っていたということであった。
役人の態度が理由だったのだ。
詳細に態度が記録されていた。
私たちは謝罪した。
そして感謝した。
一連のやり取りで過ちに気付くことができたと。
彼らは、どうして過ちに気付くことができたと感謝してきたのか、聞いてきた。
私達は彼らの会議調整通信を盗聴していたのだった。
盗聴していたことはばれていた。
ばれるようにわざと開放されていた。
「お前達が盗聴するような連中だからだ。
そんなことで本当に謝罪していると言えるのか。
どうしてお前たちは軍事力が弱いと思われる異星人の通信や情報を平気で盗み見るのだ。
むかつくのだ。」
下品な言い方で罵倒してきた。
「もう私達は他の惑星と連合しなくともお前たちの惑星軍事力を上回っているんだぞ。
隠していたんだ。
まだ盗聴をするか。
大変な事になるぞ。」
「もう盗聴はしません。」
「ところであの恐ろしく軍事力の強い事で有名な惑星の通信を盗聴するか。」
その異星人も会議回線を共有していた。
「いえ、しません。」
「何故しないのだ。」
お前たちは盗聴惑星なのに何故だと、百回ほど同じ言葉で罵倒してきた。
こちらが押し黙っていたからだ。
そして百一回目にどうして黙っているのだと聞いてきた。
大臣は泣いていた。
そして黙っていた。
「お前はどうしてそんなに愚かなのだ。
何も質問に答えようとはしない。
盗聴の指示を出したのは誰だ。
お前は答えようとはしないだろう。
愚かだからだ。
私が答えてやろう。
それはお前ではなくお前の部下だ。
そして、お前はそのことを知らなかった。
いや、知らないふりをしていた。
そして会議に臨んだ。
いや、実のところは盗聴の事実が露見した場合、部下に責任を負わせる算段であった。
明るみに出なかった場合は、お前は自分の手柄として出世のネタにでもするつもりであった。
汚い男だ。
そんな人間がなぜ部下を従えて惑星間会議に臨むことができるのだ。」
意味は、責任と手柄の間にずれを企図するものは、惑星間にずれを齎す。
信頼できない大臣との政治協定の合意は不可能だ、ということだ。
そして、上述のずれがばれないと誤認識しているということは、自分の能力の足りなさ、相手に対する侮辱を意味している。
こちらは服を着ている大人だ。
相手は裸で望んでくる子供だ。
そのように解されるのだ。
ずれを展開してくる方は、責任と利益という人間にとって根本的なものを、思考という人間にとって同様に根本的なもので弁別してくるので複層的な人間だと解される。
相手は責任の所在と利益の享受者が一致しているため、単層的、裸であると解される。
ばれないと思われているということだ。
何故ばれないか。
相手が愚かだからだと認識しているからだ。
そのことが相手にばれないと思っていた。
しかし、ばれた。
つまり騙そうとした方が愚かなのだ。
愚かと判明しているにも関わらず、聡いと思われる複層的な姿勢を取ってきた。
つまり言行不一致だ。
愚か者が聡い姿勢を取ってきたという意味だ。
そんな人間は条約など締結できない。
また、盗聴の発見事実を隠して条約を締結しないでおいた場合は以下のようになるのだ。
騙そうとした方は星に帰って、向こうが押し黙っていたため条約の締結はならなかったと、まずこちらのせいにしてくる。
続く
枯葉剤
千三百九十四青字