◎取扱注意が必要な呼吸覚醒
ダンテス・ダイジの『ニルヴァーナのプロセスとテクニック』の呼吸法の分類は3種類であって、(1)基本呼吸法(2)完全呼吸法(丹田呼吸法)(3)片鼻呼吸法を挙げている。もう二つ挙げるとすれば呼吸が無いようなのと、呼吸を意識しない=自然に任せるのがある。
これらは肉体レベルの呼吸のことだが、エーテル体レベルの気・プラーナの呼吸のことを言う場合もある。勿論肉体レベルの呼吸であっても、気・プラーナの呼吸が伴っていないことはないのだろうから、肉体レベルの呼吸とエーテル体レベルの呼吸を別のものとすることに意味があるかどうかは疑問である。
さてヴィパッサナーの中心技法である呼吸を見守るという技については、ダンテス・ダイジは呼吸法としては挙げていない。ダンテス・ダイジは冥想の前段階の下ごしらえとして呼吸法を挙げているのであって、本番としての呼吸を見守る技についてはその著書では触れていない。
ダンテス・ダイジが呼吸覚醒をメインの冥想法として挙げていないことには、帰神(神降ろし、憑依)をメインの冥想法として挙げていないことと同様のある種の意図を感じさせられる。つまりこの2種つまり呼吸覚醒と帰神は現代人にはフィットしない冥想なのではないかということである。
現代人にフィットしない冥想法として、他に積善陰徳のカルマ・ヨーガや、バクティ・ヨーガもあるのだろうと思うが、これは迂遠であるというような特性があるためではないか。
迂遠と言っても、スピーディなのは、只管打坐だけであって、ハタ・ヨーガもクンダリーニ・ヨーガも迂遠だから、只管打坐以外は、皆迂遠とも言えるように思う。ただし窮極に至る手法としては、迂遠なのも否定されることはない。個人のキャラクターに応じてオールド・スタイルなのが最適の場合があるだろうし。
一方OSHOバグワンは、ヴィパッサナーの第一の方法は、醒めていること、意識化。第二の方法は腹式呼吸。第三の方法は呼吸を見守るとして、3種合わせてヴィパッサナーという位置づけである。
OSHOバグワンのもう一つの呼吸覚醒への言及であるシヴァの呼吸法では、「鼻孔で息を見つめよ」のビの字もない。この中の息の全休止こそ呼吸覚醒・ヴィパッサナーの根幹部分なのだろうが、呼吸覚醒法修業の特徴、メリット、デメリット、必要な準備についてなどの説明がほとんどない。ここにOSHOバグワンは、呼吸覚醒を推そうということではなく、様々な冥想手法の品揃えのひとつとして呼吸覚醒を紹介しただけという、いつもの親身でない雰囲気が感じられる。