毎週土曜日の深夜(日曜日のAM1:10)、
ラジオ深夜便では演芸を放送している。
落語が多いが、漫才、浪曲、講談もやる。
いつもはだいたい九想話を書いてる頃で、
ほとんど聴けないが、
昨日は、なんか“いい予感”がして、
早めに九想話を書き終えて、
簡単なストレッチをして、1時過ぎに蒲団に入った。
この、蒲団に体をもぐり込ませたときというのは、
なかなかいい心持ちですね。
おふくろは、小さい私によくいっていた。
「かあちゃんはァ、寝っときがァ、
い~じばん(一番)幸せだァ」(茨城弁で)
今の私は、かあちゃんのこの言葉がよく分かる。
ふか~い言葉です(ドコガ…)。
昨夜の深夜便のアンカーは、加賀美さんだった。
このひとの声を聴くと、ほっとする。
そのやさしい声がいった。
「今日の演芸は、志ん生の落語です」
いや~、私はそれを聴いて蒲団の中で小躍りした。
「あなどろ」と「たいこばら」だった。
最初の「あなどろ」は穴に入った泥棒の話で、
私は初めて聴く噺だった。
江戸時代の庶民の大晦日のまくらから、
三両を工面するのに苦労してる男の話が始まった。
金に困ってる男の表情が目に見えるような
志ん生の話し方だった。
裏木戸が開いていた家に上がり込み、
宴会の終わった座敷で、
ひとり残った酒を飲んでいる男に、
その家の小さな子が来る。
これに話しかける男のようすがよかった。
志ん生も、小さかった志ん朝に
こんなふうに話しかけたのかな、
なんて思ってしまった。
「あなどろ」の最後のほうは、
寝てしまったのかあまり記憶がない。
「たいこばら」はほとんど夢の中。
惜しいことをした。
昨夜も風邪のため、早めに寝た。
会社では気が張っているため、なんとかもっているが、さすがに家に帰って
くると体をたてにしているのが辛い。
ポケットラジオのイヤフォンを耳に入れ、トイレに行ってから洗面台で歯を
磨いていると、玉置宏(字に自信がない)の声がした。「あ、落語だ」と思っ
た。何曜日か忘れたが、9時半からNHKで「なんとか名人会」とかなんとか
いう番組をやっていた。去年は木曜日だったような…。山梨でよく聞いていた。
いそいそと蒲団に入った。いつもは寝る前に、腕立て伏せ、背筋、腹筋、そ
れぞれ50回づつして蒲団にもぐり込むのだが、日曜からしていない。そんな
元気はない。
ラジオを枕元に、ノイズが最小限になる角度に置く。なぜか私の家はNHK
の電波の入りが悪い。
昨日は、古今亭志ん生だった。
毎回きっちりと話す桂文楽の18番、「厩火事」を、今日は志ん生でお楽し
み下さい。というようなことを玉置はいった。
早く寝たおかげで、志ん生が聞けるとは、風邪もわるくないな、と思った。
チャチャチャンチャン、チャチャトテシャン、
チャチャチャンチャン、チャチャトテシャン、
あの志ん生の出囃子が、始まった。
私は、敷き蒲団の上にゆったり体をあずけ、目をつぶり待った。
頭のてっぺんの、10センチぐらい上から聞こえてくるような志ん生の声が
イヤフォンから聞こえてきた。
私は、極楽でした。「厩火事」は、夫婦生活をしている人にとっては、ため
になる噺ですね。いや、噺をそんなふうに聞くことはない。楽しんで聞けばい
いですね。でも、やっぱり…、ためになる噺です。夫婦とはかぎりません。人
間はああいうこころもちで暮らさなけりゃいけませんね。