ようやく読み始めた。なかなか図書館では手に入らなかったからだ。今年の本屋大賞を受賞した新人作家による驚きのミステリーらしい。評判に違わない。読んでいて夢中になる。ページを繰る手が止まらない。思わず電車を乗り過ごしてしまってあせったほどだ。
今ようやく最後まで読んだのだが、残念ながら前半の勢いは後半になってなくなる。だいたい第1章(『聖職者』)だけで完結した短編なのだ。なかなかよく出来た話で . . . 本文を読む
これは確かにおもしろい、と思った。初めて見る磯川家は、予想に反しておしゃれで、スタイリッシュ。もっと泥臭くてドタバタだと思っていた。先入観でものを見てはならないと改めて思う。
単なるドタバタなら、僕は何とも思わない。だけど、これはそうではない。確かにバカはしている。つまらないバカをして笑わせてくれてはいる。だが、ただのバカではなく、死というものをきちんとみつめる確かな視点がここにはある。だか . . . 本文を読む
野中柊初の短編集らしい。そういえば今まで長編か中篇しか読んだことがなかった。でも、なんだかすごく意外。読み終えてそのなめらかな語り口に魅了される。すっと入ってくる。口当たりがいい。上等のワインをゆっくりと味わいながら飲んだ気分(まぁ、そんなもの飲んだことないし、飲んでもあまり味なんてわからんはずだが、まぁ、言葉の綾ということで)で、夢見心地で気持ちがよい。
さまざまな形の恋愛小説集だが、どの . . . 本文を読む
息吹は今年創立51年を迎える。それって凄すぎないか。そんなにも長きにわたって途切れることなく地道に演劇活動を続けれる。自分たちの信念を曲げないで、無理せず、息の長い活動を繰り広げる。尊敬する。
さて、そんな息吹の50周年記念企画ファイナルとしてこの2本立が上演された。『陽気な地獄破り』は息吹が旗揚げの頃から何度も取り上げたという木下順二作品。もう1本はなんと公演回数は1000回を超えようとい . . . 本文を読む
オリジナルのアニメーション映画は押井守が企画した作品で地味な映画だ。なのに、それがこれだけの大作となってよみがえる。なんか凄くないか。しかも原作のイメージを損なうことなく忠実に再現している。その姿勢たるや、きっとオリジナルスタッフも喜んだことだろう。きちんと原作をリスペクトして、自分たちの映画を作る。そんな当たり前のことを嬉しく思う。
ウオシャウスキー兄弟の『スピード・レーサー』や、これは見 . . . 本文を読む
【あみゅーず・とらいあんぐる】は、毎年同じ時期に同じ場所(ウイング・フィールド)で、同じような芝居を見せてくれる。この変わりなさで、今回 vol.17を迎える。ということはもう17年。(最初の頃はいろんな場所を転々としてたが、もう10年以上ウイングに定着)それってすごい。『女と男のしゃば・ダバ・だあ』と題されたシリーズの最新作である。『THEホテル ~もう一度、ここから~』とあるように今回はホテ . . . 本文を読む
廣木隆一監督による初のメジャー映画である。今まで彼が全国一斉拡大公開の大作を一度も撮った事がなかったという事実に正直言って驚いている。彼ほどの才能がメジャーからは黙殺されてきたところに日本映画界の大きな問題点が内包されているだなんて思うのは穿ち過ぎか。
高校3年生の時、吉永小百合に嵌っていた。いやはやお恥ずかしい次第です。彼女の映画を追いかけて劇場やらTVやら、必死になってた。当時は今と違い . . . 本文を読む
こんなシリアスなジャッキーを見たことがない。初めてジャッキー・チェンがアクション以外の映画(でも、これも一応アクション映画でもあるのだが)に挑んだ記念碑的な作品である。不法入国の中国人たちが新宿にコミュニティーを作り、助け合いながら生活している。ジャッキー演じる鉄頭は日本に行ったきり戻ってこない恋人を探しに不法入国する。映画の冒頭の漂着した座礁船からたくさんの人たちが這い出してくる場面のインパク . . . 本文を読む
これだけの映画に出た後で、『レッドクリフ』のような映画にすぐに出演してしまう金城武のフットワークの軽さ。この映画に出た後では、しばらく映画になんか出れないジェット・リーの放心。『レッドクリフ』ではなく、ダニエル・リーのローカル映画『三国志』の方に出演して、まるでこの映画をリセットするアンディ・ラウのプロ魂。三者三様の選択を促したこの超大作の存在は大きい。
待ちに待ったピーター・チャン監督渾身 . . . 本文を読む
こんなにもどうでもいい芝居はない。このタイトルだし、この劇団だから、きっと直球勝負するとは思っていたが、ここまでやるとはまさか思わなかった。さすが西川さやかさんだ。凄すぎる。
彼女のよさは天然すれすれの計算が無意識になされるところにある。(それってやはり「天然」ってことかなぁ)それをパートナーである上原日呂さんが優しいから素直の彼女のよさを否定なんかせずにそのまま見せるような演出をする。この . . . 本文を読む
これは『鴨川ホルモー』のスピン・オフである。この6つの短編集はあの長編の周囲で起きていた出来事をフォーローする。短編連作はあの小説と連動し、あの小説のファンたちを大喜びさせたことであろう。しかも、これはこれでとてもすてきな小説だし。
大好きな作品に続編なんか要らないと思う。だって大好きな作品はそれだけで完全に世界を形作るからだ。小説でも映画でも、それは同じことだ。だから、好きな作品は何度でも . . . 本文を読む
ラッセル・クロウとベン・アフレック主演のサスペンス大作である。2時間7分の大作で、「最初から最後まで息もつかせない」ということらしい。まぁ、嘘ではない。なかなか緊張感のある映画だ。悪くはない。だが、なんかテンポはいまいちで、ラストのどんでん返しなんか、つまらない。あれではそこまでのお話を反故にしてるんではないか。
ネタばれになるから書けないが、僕はがっかりした。まだなんかあるな、とは思ったし . . . 本文を読む
これには参った。いくらなんでもこんなにも荒唐無稽をひたすら続けられると、体力が持たない。200ページくらいの中編小説ならいざ知らずこれはあまりに長すぎる。殺人事件なんて書いてあるから、推理小説か、と思うだろうが、実際はそうではない。これは謎解きとは言わない。
最初は一体何が始まるのか、ドキドキした。天皇陛下が船の外で艦にしがみついている、なんてシュールなイメージには笑わされたが、無茶がどこま . . . 本文を読む
今回のダンスの時間はなんだか乗り切れない。セレクトの問題ではなく、ダンスというもののレンジの広さにただ戸惑っただけなのかも知れないが。開演前に中西理さんと少しお話した。「ダンスは芝居と違い何を見ても腹が立たない」とおっしゃる。僕は腹が立つなんてことより、取り付く島がないことが怖い。見ていて何も感じない時がある。それはそのダンサーに問題があるのではなく、明らかに僕の姿勢の問題ではないか、と思うこと . . . 本文を読む
ショーン・ペン入魂の一作である。2時間半に及ぶ超大作だ。大学を卒業仕立ての若者がアメリカを旅する。そしてアラスカを目指す。両親に反発し、就職するでもなく、自分の生き方を模索する。旅を通して何かを発見する。
正直言ってこの男の甘っちょろい考え方には辟易させられるが、まだ子供だし、傲慢で身勝手なのは若さの特権だし、と、とりあえず思うことにして、何も考えずにこの子の旅を目で追うことにする。雄大な自 . . . 本文を読む