■ 底を打った日本国債金利 ■」
マイナス0.3%まで低下していた日本の10年債金利ですが、期待外れの日銀の追加緩和発表で売られ、金利が上昇に転じています。
マイナス金利の国債を満期まで保有すると確実に損をするのですが、日銀が買った時の金額より高く買ってくれるので、利益が確保出来ます。日銀が国債の買い入れ枠を拡大するのでは無いかという思惑で買われていた日本国債ですが、それが外れて慌てて調整売りをしているのでしょう。
■ 日銀のテーパリングを警戒 ■
今回の国債金利の上昇(価格下落)は海外の投資家を中心に「期待」によって日本国債が買われ過ぎた事による反動なので、日本国債のサスティナビリティーを懸念した金利上昇とは別のものです。
ただ、日銀が追加緩和を見送った事で、そろそろ国債買い入れ枠も上限に達し、追加緩和があるにしても後1回程度では無いかという見方も強まっています。そこから先は市場での需給バランスを崩すのでヘリコプターマネーの領分ですが、一時盛り上がった「期待」ですが、現実にはハードルが高いので期待は一瞬で萎んでしまいました。
むしろ今後は日銀のテーパリングがだんだんとクローズアップされてくるでしょう。ただ、日銀の存在は「池の中のクジラ」の限度を越えていますから、日銀がテーパリングを匂わせただけで市場は大混乱します。高値掴みした日本国債(低金利の国債)で損失が確定するからです。
今回の金利上昇は、日銀の温度感の変化を市場が敏感に察知した結果かも知れません。
■ 低金利国債のリスク ■
マイナス金利の国債でも、金利が下がり続ける(価格が上がり続ける)限り、利益を出す事が出来ます。しかし、実際には金利低下(価格上昇)にも限度が有ります。
国債の場合「金利」で表現されるので分かり難いのですが、国債価格で考えればマイナス金利の現状は国債が買われ過ぎてバブル価格に達していると言えます。そろそろ日本国債のプレーヤー達も「そろそろ限界かもしれない」と思い始めているでしょう。
市場としては一本調子に価格が上昇するよりは、適当なボラティリティーによってリスク管理される方が健全ですが、日銀がそれを適正範囲にコントロール出来なくなると市場は一気に不安定化します。
外国人投資家達は先物を絡めて利益を確保しようとするので金利変動大きくなって行きます。さうがにこの様な市場でマイナス金利の国債を購入するのは国内の金融機関と言えども躊躇する様になれば、金利の上昇局面の頻度が高まります。
■ 低すぎる社債金利 ■
国債金利の低下に釣られて、社債市場の金利も歴史的に低下していました。企業は低コストで資金を調達出来ますが、投資家が冷静になれば現在の金利水準は低すぎます。
今回の国債金利の上昇に反応して社債市場の金利も軒並み上昇しています。金利の安い社債を買った投資家達に確実に含み損が発生しています。
今後、日本国債の金利が不安定になった場合、社債市場もこの影響を逃れる事は出来ません。
■ 市場との対話 ■
FRBは「市場との対話」を重んじて来ました。「対話」と言えば聞こえが良いですが、実際mには「テーパリングしちゃうぞ」「利上げしちゃうぞ」と何度も「素振り」を見せる事で、市場の過剰なリスクテイクを牽制し、市場が利上げを織り込む時間を稼いでいます。
一方、日銀の黒田総裁は一貫して「サプライズ」を演出して来ました。これは緩和拡大や金利引き下げでは「ポジティブ・サプライズ」として機能していましたが、マイナス金利導入当りから、市場はポジティブな反応を示さなくなりました。
むしろ「サプライズ」の中身が「ノーサプライズ」だと判断してネガティブな反応をしています。
■ マイナス金利に慣れる怖さ ■
既に市場関係者はマイナスの国債にも慣れてしまいました。マイナス金利は金融抑圧という視点からは、民間の当然の金利利益を政府が搾取する行為ですが、直接的な徴税では無いので民間はコストを負担しているという意識は有りません。
一方で、市中金利は低すぎて投資リスクに見合いませんが、こちらも低金利に慣れてしまいリスクの大きさに無頓着になっています。
国内の日本国債の市場参加者達は、ただ粛々と国債を購入し、粛々と日銀に売却すれば、ほんの少しの金利収益が得られる事に慣れてしまいました。これが異常な事だと感じる感性や本能も麻痺しています。
「日銀が居るから大丈夫」・・・現在の日本国債市場は日銀を盲信する事で成り立っています。「信用」は夢の様な不確かな存在ですが、信用している間は確かな物に感じられるのは人の世の常。
黒田総裁が金融機関の信用を裏切らない限り日本国債は安泰ですが・・・市場から国債が消えて行った時、日本国債市場はどういう反応を示すのか。流動性が失われた市場は危険です。