■ 政権支持率が30%台に踏みとどまる怪 ■
「消えた年金問題」で退場に追い込まれた第一次安倍内閣。それに比べて今の安倍内閣は数々の問題が噴出しても、未だ3割以上の国民の支持を保っています。これは不思議を通り越して「怪現象」に近い。
一般的には次の三点が若者を中心の安倍内閣の支持率を支えています。
1) 安倍内閣になってから民主党政権時代よりも景気が回復し、雇用も安定している
2) 野党に政権執行能力が著しく欠如しているので、自民党政権の方がましだ
3) 日本が普通の国になる為には憲法改正が不可欠だ
■ 改憲は急ぐ必要は無い ■
この3点に私も異論は有りません。ただ、憲法改正に関しては、中東情勢がきな臭くなる中で急ぐ必要は無くなったと考えています。東アジア有事の際には、解釈改憲である程度の自衛隊の運用拡大が可能ですし、仮に尖閣有事や北朝鮮有事が起きれば、国民世論は一気に改憲に傾きますから、今は「改憲の必要性」を国民に丁寧に説明するだけで十分かと思います。
自衛隊の日報が公開されるなど、自衛隊の中からも「改憲阻止」とも思える動きが出ていますが、「中東で無駄死にしたくない」という自衛隊の本音が垣間見えたと妄想しています。
■ 安倍首相の人徳? ■
先日から書いている様に、ネトウヨを始めとして安倍政権を支持している方達に共通するのは「政治的優越感」だと感じています。「時代遅れの野党」「ふがいない野党」をバカにする事で潜在的に優越感に浸っているのでしょう。
ただ、それならば、支持の対象は安倍首相意外の自民党の首相候補でも構わないハズですが、ネトウヨを始めとして安倍首相は好かれています。これは安倍朱首相の人徳の成せる技なのでしょうか?
■ 負け組のシンパシー ■
安倍首相は政治家として申し分無い家柄ですが、学歴はそれ程輝かしいものではありません。国会答弁を聞いても、決して「明晰な頭脳」の持主と感じる事は有りません。
ただ、安倍首相の何かに憑かれた様な「熱意」は感じる事が出来ます。国会で野党にボロクソに批判されても、一所懸命に抗弁し、最後は早口で言わなくても良い事まで口にしてしまう。
こんな首相の姿を見て、往年の大政治家を見て来た高齢者の方々は「首相としての器が備わっていない」と感じますが、若い方々は、社会で揉まれながらも日々頑張る自分の姿を重ねてしまうのかも知れません。
これは言わば「負け組のシンパシー」と言えるかも知れません。
現在の多くの若者が「勝組」になる事は難しい。親に将来を期待されながらも一流大学に進学出来ず、望まない就職をするも、すぐに離職し、非正規雇用で日々の糧を得ている様な人は、安倍首相に自分の姿を見てしまうのかも知れません。
これに近い首相が小渕首相でした。決して大物政治家では無いのですが、「気遣い」で首相まで上り詰めた小渕氏は、当時のサラリーマンにそれなりの人気が有りました。
■ 政治的ポイント稼ぎで国益を損なう可能性 ■
私は安倍首相が憎くて政権批判をしている訳では在りませんが、我々庶民に比べ圧倒的な「勝組」である安倍首相が、本来の日本の首相に要求される能力を有していない事には懸念を持っています。
一部の官僚を信頼するあまり、日本の国益を損なう恐れが有りますし、憲法改正に拘るあまり大局を見誤る恐れが有ります。
現に、政権基盤が揺らいでからは、「トランプ大統領との親密さアピール」で政権延命を図っていますが、これはトランプの目からは「カモネギ」としか見えない。アメリカの要求を拒否出来ない現在の安倍政権は、国益を損なう可能性が高い。
「シンゾウは微笑みながら我々を欺いていた」みたいな発言をされても尚、トランプに尻尾を振る首相を国民はどんな目で見ているのか?
■ どこかでバランスが崩れてしまった ■
実は「負け犬のシンパシー」は私自身も感じていて、国会で偉そうに(エッラソー)に上から目線で首相を追及する野党議員に対して適当にはぐらかすも結局追い詰められて早口になる首相に、思わず「ガンバレ」と心の中でエールを送ってしまいます。
本来は国会中継など見ない私や、若者が政治に興味を持つだけでも、安倍首相の存在意義は大きかった。
ただ、どこかで、バランスが崩れてしまった様に感じます。それが手のひら返しのTPP参加の頃なのか、選挙対策の消費税増税延期の頃なのか、安保法案の採決の頃なのか・・・。
多分、政権が二期目に入った頃から、国民の期待と、政権の方向性が少しずつズレていった様に思います。
既に安倍政権に重要法案を強行採決する力は無く、経団連を始めとする財界も見切りを付けています。安倍首相の起死回生の一発は、解散総選挙しかありませんが、自民党や公明党がこれを許すとも思えません。公明党婦人部が選挙支援をボイコットするでしょう。
訪米を終えて、ますます窮地に追い込まれるであろう安倍政権ですが、シンパシーを感じている方達は、さらに彼への愛情をエスカレートさせるのかも知れません。