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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

2018冬アニメ・ベスト(嫁編)

2018-04-08 06:11:00 | アニメ
 
今期アニメも無事終了しました。それでは前置き無でベストの発表です。


第一位 『ヴァイオレットエヴァーアーデン』


『ヴァイオレットエヴァーガーデン』 より

これが毎週放映されるアニメのクオリティーでしょうか?!いえいえ、一作一作が劇場版のクオリティーです。Netflixの配信だけに、もしかすると製作費が潤沢なのかも知れませんね。世界に向けて日本アニメの実力を知らしめる作品。

最初は、こんな昭和な設定のお話で最後まで持つのか不安になりましたが、さすがは吉田玲子のシリーズ構成だけあって、素晴らしい作品となっていました。

特に往復書簡の5話と、脚本家の口述筆記の7話、そして死にゆく母が娘に残した50年分の手紙の10話は出色の出来栄え。この作品、カルピス劇場の様に一年55話で観たい・・。高畑勲氏が亡くなりましたが、彼の残した遺産は、確実に日本アニメの中に息づいています。

特に10話は涙腺が決壊しました。「泣かせに来る脚本」で好きでは無いのですが・・・吉田玲子にやられました。

しかしこれだけ濃密な30分も珍しい。決して詰め込んだ作品では無いのですが、しっかりと間を取りながらも緻密に構成すれば、これだけの密度の物語が作れるのかと驚愕するばかり。

第二位 『宇宙よりも遠い場所』


『宇宙よりも遠い場所』より

何度も記事にしているので今さら必要無いかと。

とにかく、全てが素晴らしい。毎回毎回泣かされました。

ヴァイオレットの10話が「泣かせの定型」で条件反射的に涙を誘うのに対して、この作品は、丁寧に積み上げた一話一話のプロットによって毎回最期に感極まって泣かせる。脚本の出来も、全体の構成もヴァイオレットよりも数段上。


第三位  『ゆるキャン△』


『ゆるキャン△』より

どちらの卓球娘ののホクトさんですか・・・と見始めたのですが、これが意外に面白い。


第四位 『恋は雨上がりのように』


『恋は雨上がりのように』より

女子高生主人公の作品に見えますが、実は中年オヤジのファンタジーでした。「これ、実写でも良くない?店長の役は大泉洋だよね」っと話していたら、実写映画化でその通りになりました。


第五位 『刻刻』


『刻刻』より

いやー、意外に面白かったです。最期まで気が抜けませんでした。特にEDの梅津絵が本編かと・・・。



以上、家内の2018年冬アニメのランキングでした!!

以前は私がリビングのPCでアニメを観ていると、「こんなの何が良いの?」って邪魔ばかりしていた家内ですが、昨年あたりからチラ観する様になり、今年は「ヴァイオレットちゃん、まだ?」と聞くまでになりました。

特に『ゆるキャン△』は、私がログインしっぱなしにしていたamazon primeで家内が全話一人で観てました。

「今期の君のアニメベストは何? 一位は南極でしょ?」
「ううん、バイオレットちゃん」
「じゃあ、二位が南極で、三位はキリングバイツ?」
「ううん、ゆるキャン!!」

「・・・・エーーー!!」

こんな会話が成立するまでに、アニメで家庭円満です。
日本のアニメ、恐るべし。


私のベストは明日にアップします。

タルコフスキー並みに眠い『ブレードランナー 2049』

2018-04-08 03:51:00 | 映画
 



■ あまりに周囲が勧めるので『ブレードランナー 2049』を観た ■

映画の続編というものに嫌悪しか覚えない私は『ブレードランナー 2049』を観ていませんでした。それでも知り合いの多くが、「観ないと損する」とか「絶対に観ろ」と強く勧めるので、仕方なくDVDを借りて来ました。

それで感想を書きます。

「記憶が有りません・・・・。」  以上。

■ タルコフスキー級の睡魔に襲われる ■

確かに休日の昼間に酒を飲んでから見始めた私も悪かった・・・。開始10分で眠気に抵抗できなくなり、気付けば物語は中盤。Kが何故か「自分探しの旅」に出ていました。その後、再び睡魔に襲われ、覚醒したらヨボヨボのハリソンフォードが出ていました。さらにうとうとして起きたら、レプリカント同士が首を絞め合っていました。・・・以上!!

しかし、近年、これ程までにお金が掛かって出来の悪い映画を観た事が有りません。中身が空っぽなのに、間延びした思われぶりな映像の垂れ流しで救い様が無い・・・。

こういう「神秘主義」的な映画はタルコフスキーに任せておけば良い。観客が勝手に映像のそこかしこに「啓示」を見付けて喜ぶ様な演出は前時代の遺物で、アナログ的な演出です。

実は私、若いころ、タルコフスキーを「神」だと信じてました。だから大学時代に『スターウォーズ』や『ブレードランナー』について熱く語る友人を冷ややかな目で見ていました。そんな子供の映画じゃん・・・って。

でも、今タルコフスキーを観たら速攻で寝て最後まで起きない自信が有ります。これ、タルコフスキーの映画がツマラナイのでは無く、今の時代の速度に合わないというだけの話ですが。当時の社会主義国家の監視の中で、SF作家達はフィクションで体制を批判し、タルコフスキーはそれを映像による「神話」に昇華していた。そういう背景が有るからこそ成り立つ映画だった。

S映画Fといえば『スターウォーズ』や『2001宇宙の旅』の様に未来をイメージされるセットや小物が登場するのが当然の時代に、野原を彷徨い歩くだけの『ストーカー』の衝撃は物凄いものがあった。「物」では無く「気配」を描く事でSFが成立する事に興奮した。

ところが『ブレードランナー 2049』は、徹底的に作り込まれた未来の風景にタルコフスキー的な神秘主義を持ち込んでしまったから、相殺効果で何を表現したいのかが分からなくなっています。

そもそもタルコフスキーの映画って、低予算でSF映画を製作する為に生まれた演出方法であって、巨額の製作費を費やして作る映画では有りません。

■ マトリックスの続編と同じ間違いを犯している ■

本来、SF映画というのは低予算のB級映画で、ちょっとトホホな感じがする所をアイデア一発で切り抜けるというのが魅力のジャンルです。

『バックトゥザフューチャー』にしてもデロリアンが火を噴いて疾走する所に予算を割いて、後は普通の日常が描かれるから面白い。マトリックスの1作目も、キアヌ・リーブスが弾丸スローモーションでが避ける事が全ての映画。

『マトリックス2』になると、バーチャルな世界の外側が描かれますが、これが絵に描いた様なデストピアで全然新しく無い。キッレッキッレな1作目の片りんも感じられない駄作になってしまった・・・。

『ブレードランナー 2049』も同じ過ちを犯しています。確かにオリジナルの『ブレードランナー』は素晴らしい映画でした。それまでSFが描いていた理想の未来像とは180°異なるデストピア系の未来像は、この作品が確立して、その後のSF作品は皆その影響を受けた。

霧と酸性雨で煙るロスアンゼルスの映像は多くの人の脳裏に焼き付いていますが、実は雨はエアカーを吊り下げているワイヤーがどうしても映ってしまうので、苦肉の策で降らせた雨だった。こういった幸運な偶然の結果、オリジナルのブレードランナーの世界観が確立されたのですが・・・それを現代のCG技術で緻密に再現する事に私は何ら意味を見出せません。

さらに、オリジナルは「刑事物」として物語にしっかりとした骨格が有りましたが・・・新作は「自分探しの旅」で物語の推進力が非常に弱い。それを風景と思わせぶりな間で引き延ばしているので、睡魔に襲われるのは当然。

■ 落ちは「子供が生まれていた」では・・・ ■

この映画の最大の失敗は、「レプリカントが子供を産んだ」という根本的な設定。

「道具であるレプリカントに生殖能力を付加するバカが何処に居るんだよ!!」と一言突っ込んで終了!!。

前作の「レプリカントと人間の間に愛が生まれる」という結末は、現代も繰り返されるテーマで色あせませんが、「子供が生まれる」というのは現実的でも科学的でも無くSFとして到底受け入れられない。

■ 『BEATLESS』の爪の垢でも煎じて飲め ■

『ブレードランナー2049』のスタッフはSFが何かを理解していないのでは無いか?

そもそもオリジナルの『ブレードランナー』は人間の模造品であるレプリカントが人間になろうとする葛藤が観客の心に響くのに対して、今作の主人公にはその葛藤が無い。彼は自分の記憶が「模造記憶」で無いとするならば、自分は「生まれて成長した存在」であるかも知れない可能性に戸惑いこそすれ、その事に彼は価値を見出しているとも思えません。彼の恋人はバーチャルなAIですから、生殖に意味は無い。

むしろ、バーチャルなAIがレプリカントとしての体を獲得して、主人公が生殖を達成する為に奔走する話だったら私は納得したかも知れません。エッチは人類の根源的なテーマですから。

確かにAIが生身の人間に憑依してSEXしてました。その後、娼婦が「あなたの中を見たわ。空っぽだったわ」と言う一言が、私的には一番面白いセリフでした。「AIの中身が空っぽ=自我を持たない」という現代風のテーマに触れながらも、この作品のAIは、あまりにも人間的でシラケてしまいます・・・。

SFというジャンルが、「科学技術の進歩がもたらす社会の変化をシミュレート」するものであるならば、現在刺激的なテーマは、やはりAI技術が私達の生活をどう変えるかという点が最もホットでは無いか?

従来、SFはAIが自我を持つ事に興味を抱いていましたが、AI技術が現実的となる一方で、その限界も理解される現代においては、AIと人間の関係性を突きつめてゆく『BEATLESS』の様な作品こそが現代的だと私は感じています。


確かに『BEATLESS』のアニメは残念が出来ですが、原作は面白い。脳が興奮します。だから、眠くなるどころか、電車を乗り過ごしてしまいます。


タルコフスキーは別格として、『ブレードランナー2049』は眠くなる時点で映画として面白くないんですよ。でも、多くの人が「怖くて批判出来ない」空気が有る。「傑作」と言わないと自分の中の「ブレードランナー教」が崩壊すると恐れている・・・。


・・・・本日は余りに周囲が「傑作」と持ち上げるから仕方なく観てみたけど、TSUTAYAの360円を返せと世界の中心で叫びたくなる映画の評論を書いてみました。


いや、待てよ、この作品は「ブレードランナー教徒」に課せられた試練なのかも知れません。眠気に打ち勝つ事で信仰の証を立てるという・・・。しまった!!、酒なんて飲んで観ると罰が当たるかも知れない・・・。

あ、でもフィリップ・K・ディックの原作の邦題は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』だった。ならば、眠りに落ちて正解なのかも。



他人が苦労して作った作品を酷評するのはイケナイ事ですが、きっと勧めてくれた方々が感想を聞いて来るに違いない。その時に「クソ!!」とか言っちゃわない様に、こっそろブログでガス抜きしました。でも、細かいディテールの感想を聞かれそうだから・・・もう一回も観ようかな。シラフで。