インフレについての雑な考察を・・・
■ 「リフレ + 財政拡大」でインフレは達成できる ■
ゼロ金利の罠に落ちた経済で、リフレ政策だけではインフレを達成できない事は日銀の異次元緩和が証明してしまいましたが、三橋氏らがかねてより主張されている「リフレ政策+財政拡大」ではインフレを実現する事は可能です。
これは昨年8月のジャクソンホール会議(通貨管理者の会議)でのシムズ教授の講義でも示された内容で、世界の経済学者が注目しています。
■ 「財政インフレ」は「悪いインフレ」となる ■
ただ、この場合実現するインフレは三橋氏らが目標としている「良いインフレ」では無く、「財政インフレ」と呼ばれる財政不安から通貨の価値が棄損する「悪いインフレ」になる可能性が高い。
ヘリマネ論者たちは「財政をもっと拡大しろ」と要求しますが、財政拡大は一時的にせよ景気を回復させる事は確かです。結果的にインフレが達成された場合、日銀は異次元緩和継続の口実を失い、国債の購入を段階的に減らす事になります。(テーパリング)。
当然、現在ゼロ近傍に固定されている10年債までの金利も上昇します。指値オペまで実施して必死にゼロに抑えている国債金利が上昇すれば、現在の様に「金利ゼロで国債を発行」するマジックは消失します。
国債金利が上昇し始めると、「財政の継続性」の問題が着目され、現状の「国債モラトリアム」とも「無限国債」とも言える状況は消失し、海外の投資家達は「インフレによる円の価値の減少」に気を配る必要が出てきます。
こうして、為替市場では円が売られ易くなり、「円安によるコストプッシュインフレ」によって「悪いインフレ」が加速する悪循環が始まります。
■ 国内要因で悪いインフレが始まるのは当分先の話 ■
日本は異次元緩和を継続し、かつ高齢化によって財政が毎年1兆円ずつ拡大すると見込まれていますから、どこかで悪いインフレが始まると見られています。ただ、国内はデフレ圧力が高いので、国内要因でインフレが加速するのは当分先の話です。
■ 世界的な金利上昇トレンド ■
日本の停滞は少子高齢化が原因と思われがちですが、アメリカをはじめとする先進国すべてが「成長の限界」に直面しているのが現在です。これは80年代のアメリカから始まっており、サマーズはこれを「長期停滞」と呼び、過剰な金融政策によるバブルでしか経済は発展する余地が無いと述べています。事実、アメリカは80年代から10年周期でバブル崩壊を繰り返しています。
トランプの政策如何ではありますが、トランプが財政拡大路線を取れば、アメリカのインフレ率は上昇し、FRBの利上げベースも早まります。世界の金利もこの影響を受けるので、世界的な金利上昇トレンドが発生します。
■ 日銀は国債金利をゼロにペッグ出来るか? ■
日本は成長力が低下しているので、国内要因で金利上昇は起こり難いのですが、世界の金利上昇トレンドが原油価格や資源価格を押し上げると物価上昇圧力となります。
ただ、トランプバブルは新興国の資金流出を伴うので、中国などの景気減速は資源価格を抑制する方向に働き、原油価格は40ドル~50ドル台で安定するかもしれません。
ただ、米国との金利差が開くと円キャリートレードが加速して円安傾向が強まります。特にゼロ金利を日銀が継続するので、円は調達通貨として魅力的です。円安は異次元緩和前半の様に、輸入物価を上昇させインフレ圧力となります。ただ、景気にも悪影響なので、国内のインフレ率の2%達成は難しいかも知れません。
■ いざとなったら消費税を増税するだろう ■
日本のインフレ率が2%に迫ったら、多分消費税が増税されるでしょう。これで、何年かは消費が抑制され、インフレ率を押し下げる事が出来ます。こんな感じで、日銀は異次元緩和をズルズルと継続し、財政をファイナンスし続ける。
そうしているうちにも次なるバブルが弾けて、世界経済は再びリセッションに突入・・・。ただ、今度の金融危機が国債の信用崩壊や、通貨の信用問題に発展すると・・・世界的に「悪いインフレ=スタグフレーション」に突入するかも知れません。