人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

ルー財務長官の発言の真意は如何に・・・消費税を引き上げなくても景気は充分冷えている

2014-10-15 10:21:00 | 時事/金融危機




秘書A  黒田総裁、机の上のこのメモはルー長官からですか?

黒田  そうらしい。うーん・・・相変わらず難解だな・・・。

秘書A  先日、長官は日本の消費税増税を牽制されていましたが、その件でしょうか?

黒田  まあ、あれは行き過ぎた円安を牽制しただけだからな・・。

秘書A  では、あれはアメリカの真意では無いと?

黒田  このメッセージがその答えなのだろう・・・しかし分からん!!

秘書A  あの発言もあって円安も一休みしましたから、追加緩和をしろと言う事では?

黒田  私もそう思うのだけど、確信がモテない・・・。



秘書B  総裁、何をご覧になられているのですか?

黒田  ルー長官からのメモだよ。

秘書B  ・・・それ、先ほど私がボールペンの試し書きをした紙なんですが・・・。



■ 消費税10%をに待ったを掛けたルー財務長官 ■

アメリカのルー財務長官が「政策当局者は財政再建のペースを慎重に調整し、成長を加速させるような構造改革が求められる」と発言して、消費税10%の決定に警鐘を鳴らしています。

これをしてメディアは一斉にルー長官の発言を取り上げています。

日本の景気減速はIMFも指摘しており、普通に考えれば10%の引き上げは有り得ません。ただ、政府や財務省は10%増税を止めれば、消費税増税が景気後退を引き起こした事を認める事になるので、引っ込みが着かない状況に陥っています。

そこでルー長官が助け舟を出したのでしょう。「アメリカもIMFも拙速な財政改善の悪影響を心配しているので、今回の引き上げは見送るり、景気回復に全力を尽くす」という筋書きを立て易くなりました。

■ 行き過ぎた円安を牽制したルー発言 ■

ルー長官の発言の真意はもう一つあるでしょう。市場は年末の日銀の追加緩和を予測して円を売り始めています。ただ、円安があまりに急激に進行してしまったので、日銀が追加緩和というカードを切り難くなってしまいました。

自民党の中からも、政府の中からも円安のデメリットを強調する発言が出始めています。これは選挙を控えているので当然とも言えます。国民の生活は円安で苦しくなっているので、これ以上の円安誘導は選挙で不利になるからです。

日米の円安を牽制する発言で、為替レートが105円程度に落ち着けば、日銀は追加緩和に踏み切り易くなります。

「消費税増税を見送ると同時に、ここは一気に追加緩和によって日本経済を成長軌道に乗せる」とでも言えば、国民はコロリと騙されます。



まあ、ルー長官の発言の真意は、私などが知る由も無いのですが・・・。妄想のネタにはなります。

日銀の追加緩和は有るのか・・・リフレ政策の功罪

2014-10-15 02:42:00 | 時事/金融危機
 

■ アベノミクスがもたらしたものは円安であった ■

鳴り物入りでスタートしたアベノミクス。
最近ではその賞味期限も過ぎたので、メディアのみならずご安倍総理もあまり口にしなくなりました。

「第一の矢」=大胆な金融政策(リフレ政策)

1) 日銀の異次元緩和という形でマネタリーベースを2倍に増やす
2) 円安が進行し、80円台から100円台に為替の調整が進んだ
3) 昨今では110円まで視野に入れた円安が進行中
4) 円安に伴い株式市場が上昇(海外勢の買い入れ枠が名目で拡大)

「第二の矢」=機動的な財政政策(公共投資の拡大)

1) 労働力の不足と原材料価格の高騰という「供給制約」でとん挫
2) 補正予算による一時的な公共事業拡大は、一時的な効果しか生んでいない
3) そもそも本気で長期的な公共事業拡大は考えていない
4) 「第二の矢」は自民党土建族とそれに連なる土建業者への選挙対策であった

「第三の矢」=国民投資を喚起する成長戦略(規制緩和と構造改革)

1) TPPの協議が進行中
2) 各種諮問機関が様々な規制緩和を提言
3) 現在進行中で規制緩和が検討されているが実績は無い


現状では、アベノミクスの成果で顕著だったのは異次元緩和(リフレ政策)による円安だけであったと言えます。

ただ、円安は異次元緩和の前から始まっていたので、これは、円キャリートレードの解消とヨーロッパ通貨危機によるリスクオフによって過度に円高に振れていた為替レートが、1ドル100円という適正価格に戻る時期に一致しただけとも言えます。


■ 円安のメリットとデメリット ■

円安は輸出企業には追い風となり、輸入企業には逆風となります。

1) 自動車や大手家電メーカーなどは円安で円建ての利益が水膨れする
2) 電子部品や素材などの輸出産業も円建の利益が水膨れする

3) 原油価格が値上がりする
4) 原油や天然ガス価格の上昇が電力価格を押し上げる
5) 100円ショップやユニクロなどの輸入企業では円安で輸入価格が増大し利益が減る
6) 外食産業などでも、円安で食材の調達コストが増大する
7) 素材産業なども円安で原材料コストが増大する
8) 部品産業などでは、材料費の国内調達コストが増大する(素材の輸入価格上昇)
9) 建設業でも鉄鋼などの輸入価格が増大する
10) スーパーなど小売業でも輸入食材などの価格が上昇する


■ 円安による実質賃金の低下 ■

最近の110円に迫る急激な円安で、円安のデメリットに注目が集まっています。

アベノミクスと日銀の異次元緩和の目的は「デフレ脱却」であり、そのための道具が「物価上昇」でした。

アベノミクスの開始当時はリフレ論者を中心に物価の下落が日本のデフレの原因であるとの意見が勢力を伸ばしていました。

確かに日銀の異次元緩和(リフレ政策)によって物価上昇が始まり、デフレ脱却が意識されましたが、昨年5月に株価が下落した時点で、楽観的ムードは急激に縮小しています。株価の回復で恩恵を受けた富裕層が消費を絞った事で、百貨店売上は減少に転じ、高級車などの売れ行きも一気に落ち込みます。

その後は輸入品の値上げなどがジリジリと進みますが、庶民の所得は伸びないので、実質賃金が低下し、生活が徐々に苦しくなると感じる人が増え始めます。TVのニュースでは、大企業の賃金が上昇したと盛んに宣伝されましたが、国民の平均所得は伸びておらず、実質賃金は低下しました。

多くの企業、特に外食産業などでは原材料費の値上がりの価格転嫁が出来ませんでしたが、消費税増税の際の便乗値上げで、牛丼チェーンを始め多くの企業が消費税以上の値上げに踏み切りました。

こういう分かり易い値上げに庶民は敏感なので、消費税増税を切っ掛けにアベノミクスへの期待が一気に萎んでしまいました。

■ 円安によるスタグフレーションが起きただけ ■

アベノミクスという「虚構」への期待が薄らいだ現在、円安がもたらした物は、一部の輸出企業の利益の水増し(販売量は増えていない)と、景気足踏みの中での物価上昇でした。

結局、異次元緩和の期待感が薄らいだ後に残ったのは景気足踏みの中での物価上昇、要は「スタグフレーション」でした。

■ 株価や不動産価格は「プチバブル」になった ■

一方、アベノミクスの期待感は株式や不動産市場でプチバブルを作り出しました。

株式市場は8000円台から一気に15000円台に2倍近くになりましたし、東京を中心としてタワーマンションなどの優良不動産が一気に値上がりしました。

折しも、東京に戦後建てられたビルの建て替え時期に差し掛かっていた事と、東京オリンピックの決定が追い風となって、東京限定の再開発ラッシュが始まっています。

ただ、本来は儲かるはずの建築業界ですが、東北復興で原材料費と人件費が値上がりしているので、建築業界の利益は薄いものとなっており、バブル期の活気からは程遠いものがあります。(雇用回復には寄与しています)

■ 円高のデメリットが目立て来た ■

昨今の110円に迫る急激な円高で、安倍総理からも、自民党内部からも、これ以上の円高は経済にとってマイナスになるとの発言が出始めています。

特に、消費税増税で景気が減速している時期だけに、輸入価格の値上がりは庶民の生活を直撃しますし、価格転嫁が出来ない企業の業績も悪化させます。

輸出企業など為替予約で円安リスクをヘッジしている企業でも、予想を超える円安の進行はデメリットが大きくなります。

自民党内部から日銀の追加緩和を牽制する発言が増えています。

■ 追加緩和を望むのは金融市場だけ ■

市場関係者だけが依然として日銀の追加緩和に期待しています。FRBがQE3の終了と利上げに踏み切ろうとする中で、低金利の資金の供給の減少は相場の暴落を引き起こす可能性があるからです。

ECBのドラギ総裁は量的緩和に慎重ですから、当然、日銀に期待が集まります。

一方え日銀の異次元政策の表面的な目的であった円安が勝手に進行してしまったので、日銀が追加緩和に踏み込む理由が希薄になっています。

■ リフレ政策の経済効果の底が見えてしまっている ■

アベノミクスの結果、リフレ政策の経済効果の限界が見えてしまった事も日銀の追加緩和に逆風です。

ゼロ金利の罠に落ちた経済では、金融緩和は結局期待しか生み出せず、期待は直ぐに薄らぐ事が異次元緩和によって証明されてしまったからです。

異次元緩和の実行時には勢いのあったリフレ論者達がすっかり鳴りを潜めています。むしろ過度な円安を牽制する人達も出始めています。

■ アメリカの利上げの援護の為に追加緩和に踏み切らざるを得ない日銀と財務省 ■

財務省としては日本国債の需給が安定している間は、追加緩和というカードは切りたくは無いはずです。無理に日銀が追加緩和に踏み切ると「財政ファイナンス」と見られ、国債の需給が混乱する可能性があるからです。

一方、昨今の世界的な市場の混乱の原因であるアメリカの利上げ開始の為には、日銀の援護射撃は不可欠であり、アメリカからの圧力は相当高いと予想されます。

結局、「ドルの安定」あっての「世界経済の安定」ですから、日本の景気回復よりも、金融市場の安定が優先されるはずです。

■ 消費税10%引き上げの決定が強行されるのか? ■

問題は、円安のデメリットが明確になってきた状況で、日銀が何を理由に追加緩和に踏み切るのかという体裁です。

一つの可能性としては、消費税10%増税の決定とカップリングで日銀が追加緩和に踏み切るシナリオです。

消費税8%増税後の景気の落ち込みを鑑みるに、安倍政権が率先して消費税10%に踏み切るはずがありません。景気の落ち込みによる税収の減少の方が、消費税増税の効果を上回る事は明確だからです。

それでも10%の決定が強行される様ならば、その目的は、日銀の追加緩和しかあり得ないのでは無いでしょうか?

■ リーマンショックは終わっていない ■

世間ではすっかり「リーマンショックは終わった」と思われていますが、リスクは大量の低利の資金供給(金融緩和)で誤魔化されただけで、それが断たれれば市場は崩壊します。

今回のアメリカの株式市場の混乱は、金融緩和の縮小予測だけで発生しています。

9月頃に先行した反応したのは米国債市場でした。QE3の終了が迫る中で、米国債金利が上昇に転じた時、一気にリスクオフが仕掛けられています。

結局、リーマンショックの歪の最大のものが国債市場と中央銀行のバランスシートに集まっています。この歪の解消は難しく(中央銀行の保有する過剰な国債の市場売却)、世界に先行して量的緩和に踏み切った日本では、既に国債市場のメインプレイヤーは日銀になっています。

アメリカはQE3終了で異常な状況に終止符を打つ事に成功した様に見えますが、確実に悪化するであろう米国債の需給状況をどこまでコントロールして金利を抑え込めるのか、FRBの手腕の見せ所です。

「利上げや景気回復」と「米国債金利の低位安定」は相反します。

米国債の強みは、他国の経済が悪化した時に輝いて見える事です。

「強いドル政策」とは、他国経済への攻撃を意味しているのかも知れません・・・。