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『凪のあすから』・・・ウルトラCで大逆転

2014-02-01 05:03:00 | アニメ
 



本日はネタバレ全開!! 未見の方はご注意を!!

■ 「大化け」した『凪のあすから』 ■

今期アニメは『となりの関くん』を除いて全滅状態・・・。
と言うか前期アニメが素晴らし過ぎたので、作品評価のハードルが上がってしまいました。

そんな中、『凪のあすから』『サムライフラメンコ』『キルラキル』『ゴールデンタイム』といった前期からの2期連続作品が面白くなって来ました。

特に、前半はイマイチだった『凪のあすから』が後期になった途端、ビックリする程面白い作品の大変身しています。P.A.WORKSの作品ですが『TARI TARI』同様に後半に大化けするのは、この事務所の特徴でしょうか?

■ アニメとしての自由度を最大に生かした「海の中の村」の設定が素晴らしい ■

この作品の特徴は、「海の中」に人が住んでいるという設定。
汐鹿生(しおししお)は海底にある村落です。そこに住む人達は見た目は陸上の人と全く変わりませんが、「えな」と呼ばれる体の表面の膜によって海の中でも呼吸が出来ます。汐鹿生の生活は、陸上の生活と全く変わらず、この様な海中の村が日本各地に点在しています。

この作品の前半の魅力は、海の中の描写でした。緑の海藻に覆われた海底の風景は山間の村落の様でもあり、遠く水面にゆらぐ太陽は幻想的です。そして魚達が目の前を泳ぎ回っています。
ある意味、「おとぎばなし」なのですが、そこに住む人々の生活が地上と何ら変わらず、ちゃぶ台を囲んで焼き魚を食べ、味噌汁を飲みながらTVを見ています。「海の中に人々が住んでいる」という設定だけで違和感を覚えそうですが、そこでの暮らしを地上と同じに描くだけで視聴者はツッコミ所を失ってしまいます。

そして「海の人」は「陸の人」とも交流が有ります、ただ、漁業権を巡って争いが絶えず、お互いに反目していますが、これも隣町同士の争い程度の事です。

■ 海と陸の反目 ■

大人達の対立は、子供達にも伝搬しています。海の中学校が廃校になった為、陸の中学校に転入した汐鹿生村の4人の15才の子供達も、最初は陸の生徒達と反目しています。

しかし、何事にも真剣なリーダー格である先島 光(さまき ひかる)は、陸の生徒と接するうちに、徐々に彼らも自分達と何ら変わらない事に気づいていきます。光の影響で、他の3人も徐々にクラスに溶け込んで行きます。

そんな彼らが、陸と海の反目によって中止になった祭を、クラスメイトと一緒に再開させようと奮闘します。しかし、陸の漁師と海の漁師の話し合いは物別れになり、陸の漁師達だけで祭りは行われる事になります。

■ 海を封印した事で作品としての面白さが増した後半 ■

陸では祭りの準備に皆がうかれていますが、海の中では重大な事が進行しています。地球の寒冷化という大きな気候変動を本能的に予見した海の人達は、気候変動が収まるまで冬眠してやり過ごす様に体が出来ています。人々の活動は徐々に緩慢になり、幼い者から冬眠して行きます。光達4人は、祭を成功させる為、冬眠に抵抗しますが、家族達は冬眠して行きます。

そして迎えた祭りの日、ちさきを除いた3人は海神様の怒りに触れて海に転落してしまい、行方不明となってしまいます。多分、冬眠しているのだろうと人々は考えています。

後半はそれから5年後の月日が流れています。海面は流氷で覆われ、めったに雪が降らなかった陸の町は、雪国の風景に一変しています。そして・・・陸に住む人達は5年分成長し、歳を取っています。

後半は陸の生活が丁寧に描かれて行きます。富山県に会社があるP.A.WORKSの雪の描写は出色です。まさに生活の中に有る雪が描かれます。そこそこに吹きだまった雪であったり、踏まれてマダラになった歩道の雪であったり・・・。

海の中を描く事でファンタジー色が際立っていた前半に対して、後半は「海を封印」する事で作品のリアリティーが格段に向上します。この作品にとって「海の村」は魅力でも有り、邪魔な存在でもあったのです。

■ 5年のギャップによって新たな恋が始まるウルトラCにノックダウん ■



作品の前半は海の4人と陸の親友を加えた5人の恋のすれ違いが描かれます。
紡←まなか←光←ちさき←要 といった5人の一方通行の恋に子供達は苦しみます。
それが、冬眠によって一瞬にして断たれてしまいます。

一人、陸に残されたちさきは高校を卒業して看護学校の生徒になっています。海の4人の親友の木原 紡(きはら つむぐ)も大学生になっています。子供達が5年成長した事で、「中学生の恋」という「子供の恋」が、「普通の恋」の重さを持ちます。これが後半の魅力に繋がって行きます。

5年という歳月は新たな恋を生み出します。

5年前小学生だった光の義理の姪の美海(みうな)とその友人のさゆは、子供ながらに光と要に憧れていました。それは当時、小学生の恋にもならない憧れでした。

ところが、光と要がひょっこりと陸に戻って来ます・・・5年前と何ら変わらぬ姿で。冬眠していた彼らにとっては、5年前は昨日の事の様であり、成長してしまった同級生やちさきに対して彼らは複雑な心境を抱きます。

一方、美海とさゆにとっては一大事です。5年前は叶わない幼い恋心に過ぎなかったものが、現実の恋の対象として、目の前に突然現れたのです。それも、自分と同じ年齢で・・・・。

このウルトラCには、はっきり言ってヤラレました。前半では脇役と思われていた、姪の美海が、何と後半では主役となるのです。そして、その叶いそうにない恋に、50才に近い年齢の私もドキドキしてしまいます・・・。

さらに、ちさきは紡の家に引き取られて生活しています。5年間一緒に暮らした時間は、二人の関係を緊密にしています。一方でちさきは光への恋は忘れられない・・・そんなちさきを好きな要は複雑な思いでちさきを見つめます。5年の歳月は要の前に大きく立ちはだかりますが、同様に光を思い続ける「ちさき」にとっても5年という時の隔たりが・・。

ウワ^^^ドロドロだぁーーーー。岡田磨理節が炸裂です!!

もう、毎週、目が離せません。

■ アニメの特質を最大限に生かした展開 ■

実写のドラマでは、中学生がいきなり5年成長する事は出来ません。しかしアニメではそれが可能です。そして、5年間成長しない事も可能です。

そういったアニメの自由度を最大限に意識した作品ですが、やはり魅力は現実的な恋行方。
こういう作品を作らせたら、『True Tears』の時代からP.A WORKSと岡田磨里のコンビは圧倒的な魅力を発揮します。

アニメって本当にスバラシイですね。