■ 先行指標が低下している ■
アメリカ経済の全量を知ろうとする時、次のサイトのグラフは非常に参考になります。
http://zai.diamond.jp/list/fxmarket/us
これらのグラフから分かるのは次の事柄です。
1) 中古住宅、新築住宅とも売り上げが順調に伸びている
この点に注目して、「米経済は順調に回復している」と評価するアナリストが大勢居ます。
住宅価格の下落によって、中古住宅、新築住宅ともに値ごろ感が出てきた。
金融緩和による資金供給によって、一部の人達は低利で資金調達が可能であった。
緩和マネーを利用して、金融機関が中古住宅や新築受託を賃貸目的で購入していた。
住宅販売件数の増加の理由は、概ねこんな所でしょう。
ところが先行指標を見ると・・・
2)住宅着工件数、住宅建設許可件数共に低下し始めている
米国債の長期金利の上昇が住宅市場に圧力を掛けている。
金利上昇懸念で需要の先細りが予想され、在庫の増加が予想される。
在庫と供給過剰が意識され、着工件数、申請件数とも下落に転じている。
アメリカの景気回復はまだまだ本調子では無く、一気に加速する段階では無い様です。
■ 雇用回復の遅れと、雇用の質の低下 ■
3) 非農業部門雇用者変化数は横ばいです。
一方、正規の雇用から、賃金の低いパートタイムの雇用へのシフトが顕著です。
その影響は、消費の低迷に現れています。
3) シカゴ購買部境界景気指数が下落し始めている
4) ISM非製造業景況指数も低下し始めている
5) NY連銀製造業景気指数も長期的に緩やかな低下傾向にある
ここら辺は、日本のデフレスパイラルと似た様な状況でしょう。
■ 米国長期債の金利動向が気になる ■
結局、FRBが緩和縮小を示唆すれば、長期金利が上昇して実体経済も減速します。
FRBは慌てて緩和縮小予測を後退させましたが、
その結果、長期金利は反転下落しました。
しかし、30年債などは再び金利が症状し始めています。
緩和延長による、長期的に見たインフレ率の上層を織り込んでいると思われます。
10年債金利も再び上昇し始めています。
どうも米国債に弱気の風が吹きはじめた様に思われます。
■ 米国債金利の上昇と、リスク市場の下落が並行して起こる不気味さ ■
ダウも日経平均も下げています。
FRBの緩和延長観測でドルの値下がりが影響しているのでしょう。
リスク市場の相場が下がっている一方で、リスクオフの米国債買いに勢いが見られません。
最近、リスク市場と米国債市場の相関に崩れが見られる様です。
米国債に資金逃避しても、米国債の価格が下落すれば(金利上昇)損失が発生します。
どうも市場の資金が行き場を無くし始めた様です。
■ FRBに既に打つ手は無い? ■
FRBは緩和延長か、緩和縮小かの選択肢しか残されていません。
緩和縮小を示唆しただけで、市場が敏感に反応するので、
「緩和縮小と思わせて、実は緩和縮小は当分しません」的なチンケなサプライズを狙っています。
これって、全力でトホホ感が漂います。
思い切って、「バーナンキ引退記念、異次元緩和」でも打ち出せば・・・。
まあ、バーナンキは状況によっては緩和拡大もあり得ると発言していますし。
何れにしても、アメリカの景気回復予測が住宅販売の上昇のみに依存し、
その中身が、金融機関の投資的な買いでした・・・
ここら辺のカラクリが明らかになって来ると、米経済の先行きは相当怪しくなってきます。
そもそも、雇用統計を始め、アメリカの経済指標が信頼出来るかという問題は・・・。