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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

アメリカ経済は回復している?それとも後退している?

2013-07-30 04:08:00 | 時事/金融危機
 

■ 先行指標が低下している ■

アメリカ経済の全量を知ろうとする時、次のサイトのグラフは非常に参考になります。

http://zai.diamond.jp/list/fxmarket/us

これらのグラフから分かるのは次の事柄です。

1) 中古住宅、新築住宅とも売り上げが順調に伸びている

この点に注目して、「米経済は順調に回復している」と評価するアナリストが大勢居ます。

住宅価格の下落によって、中古住宅、新築住宅ともに値ごろ感が出てきた。
金融緩和による資金供給によって、一部の人達は低利で資金調達が可能であった。
緩和マネーを利用して、金融機関が中古住宅や新築受託を賃貸目的で購入していた。

住宅販売件数の増加の理由は、概ねこんな所でしょう。


ところが先行指標を見ると・・・

2)住宅着工件数、住宅建設許可件数共に低下し始めている

米国債の長期金利の上昇が住宅市場に圧力を掛けている。
金利上昇懸念で需要の先細りが予想され、在庫の増加が予想される。
在庫と供給過剰が意識され、着工件数、申請件数とも下落に転じている。

アメリカの景気回復はまだまだ本調子では無く、一気に加速する段階では無い様です。

■ 雇用回復の遅れと、雇用の質の低下 ■

3) 非農業部門雇用者変化数は横ばいです。

一方、正規の雇用から、賃金の低いパートタイムの雇用へのシフトが顕著です。

その影響は、消費の低迷に現れています。

3) シカゴ購買部境界景気指数が下落し始めている
4) ISM非製造業景況指数も低下し始めている
5) NY連銀製造業景気指数も長期的に緩やかな低下傾向にある

ここら辺は、日本のデフレスパイラルと似た様な状況でしょう。

■ 米国長期債の金利動向が気になる ■


結局、FRBが緩和縮小を示唆すれば、長期金利が上昇して実体経済も減速します。

FRBは慌てて緩和縮小予測を後退させましたが、
その結果、長期金利は反転下落しました。

しかし、30年債などは再び金利が症状し始めています。
緩和延長による、長期的に見たインフレ率の上層を織り込んでいると思われます。

10年債金利も再び上昇し始めています。

どうも米国債に弱気の風が吹きはじめた様に思われます。

■ 米国債金利の上昇と、リスク市場の下落が並行して起こる不気味さ ■

ダウも日経平均も下げています。
FRBの緩和延長観測でドルの値下がりが影響しているのでしょう。

リスク市場の相場が下がっている一方で、リスクオフの米国債買いに勢いが見られません。

最近、リスク市場と米国債市場の相関に崩れが見られる様です。
米国債に資金逃避しても、米国債の価格が下落すれば(金利上昇)損失が発生します。

どうも市場の資金が行き場を無くし始めた様です。

■ FRBに既に打つ手は無い? ■

FRBは緩和延長か、緩和縮小かの選択肢しか残されていません。
緩和縮小を示唆しただけで、市場が敏感に反応するので、
「緩和縮小と思わせて、実は緩和縮小は当分しません」的なチンケなサプライズを狙っています。

これって、全力でトホホ感が漂います。

思い切って、「バーナンキ引退記念、異次元緩和」でも打ち出せば・・・。
まあ、バーナンキは状況によっては緩和拡大もあり得ると発言していますし。

何れにしても、アメリカの景気回復予測が住宅販売の上昇のみに依存し、
その中身が、金融機関の投資的な買いでした・・・
ここら辺のカラクリが明らかになって来ると、米経済の先行きは相当怪しくなってきます。

そもそも、雇用統計を始め、アメリカの経済指標が信頼出来るかという問題は・・・。


「ひろのひとりごと」さんの本が発売になりました

2013-07-30 03:40:00 | 
 



私がちょくちょくお邪魔して、議論をさせていただいている「ひろのひとりごと」さん。
そのブログ主さんが本を出版されました。

「日本経済が頂点に立つこれだけの理由」 山本博一 著

開発系のエンジニアをされている方ですが、
三橋貴明氏に感化されて経済ブログを始められ、
様々なデータをご自分でエクセルで作られています。

三橋氏同様、デフレ脱却が日本の成長のカギという立場で、
金融緩和と、財政出動の重要性を主張されています。

「自国通貨建ての内国債は破綻しない」から「デフレ時には公共事業を拡大すべし」という主張は、単純には受け入れ難いものもありますが、豊富な独自のデータから自説を裏付ける手法は、その労力を考えただけでも頭が下がる思いがします。

経済に関するグラフや統計の読み方は難しく、様々な複雑な要因をどう切り分けるかによって、結果の見方が180度変わってきます。

そういった意味において、結論が私とは180度違うケースもありましすが、元となるデータはどれも興味深いもので、「破綻論者」の私から見ても有用なものが数々見受けられます。

何よりも、専門以外の分野を独学で勉強され、持ち込み原稿から出版に漕ぎつける「意思の力」に感動しました。


景気が国民の「気」の総体であるならば、こういう強い意思を国民の多くが共有すれば、あながち不景気の脱却も無理では無いのかも知れません。


そういった意味において、ネガティブな記事が多い、当ブログは多いに反省すべきなのかも知れません。


「その通りだ!!」と喝采を送るも良し。
「このデータの見方は違うのでは」と検証するのも面白い本です。

ケインズとハイエクの論争では有りませんが、
経済学は意見の対立が、その発展の原動力となる事もあります。
又、立場が変われば、世界の見方も変わる好例とも言えます。

そう言った意味において、バブルを知らない世代の気持が読み取れ、
彼らの立場から、日本経済や社会がどう見えているのか、
三橋氏が彼らの支持をどうして集めるのかという点を理解する意味においても
この本は有用かつ興味深いと思っています。


上の写真は津田沼の丸善の経済本の書棚にフェースアウトで陳列されていたものです。
機会があれば、本屋さんで探してみて下さい。