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価値の保存

2010-06-09 17:52:00 | 時事/金融危機




■ 金は価値が保存されるのか? ■

「世界恐慌」が訪れるかどうかは、神のみぞ知るですが、我々は生活の為に自分たちの資産をなるべく減らさないで保全しなければなりません。

「金」は一つの回答かもしれませんが、誰もが思いつく方法なので、あまりにも解答として簡単過ぎて足を掬われる気がします。

「金」で失敗するケースとしては、「金の国家統制」が真っ先に考えられます。1920年の世界恐慌でも日本を初め世界各国は「金兌換通貨」を一時試みて、通貨防衛を図りました。結果的に流動性を阻害して、経済崩壊を加速する結果となった様ですが、今回の危機に際しても緊急避難の方法として、一時的な兌換制の復活は十分に考えられます。

「金兌換制」の復活に際しては、各国政府が十分な金を備蓄している事が重要です。各国は金の備蓄量に相当した通貨しか発行できませんから、国民から「金」を安価で供出させる事は予想の範囲内です。この際、金の自由市場は一時凍結させないと効果がありませんから、金は持っていてもしばらく換金出来ない状態になるでしょう。韓国の通貨危機の際には、韓国国民は自発的の手持ちの金を国家に供出しました。

「金」自体の価値は決して無くなる事はありませんが、「金の国家統制下」においては金の流通の自由度は大きく減少し、高値で購入した金が損失を被る事も起こりうるかもしれません。

尤も「金」の素晴らしさは、コンパクトに価値を集約出来る点で、要は「隠せる」点にあります。10年、20年の内には統制も解除されるでしょうから、それまで天井裏にでも隠しておく人もいるでしょう。さらには「闇の金市場」で換金する事も出来るでしょう。ですから、今「金」を買う事は決して無駄にはなりませんが・・・それなりの覚悟も必要です。

■ 「食料」による価値の貯蔵 ■

「恐慌」が訪れても人は生きていかなければなりません。
「金」が無くても人は生きていけますが、「食べ物」が無ければ人は生きていけません。

戦後の混乱期には、「食料」の相対的価値が飛躍的に高まっています。イギリスでは家を売ったお金でバターが半パウンドしか買えなかったという話も聞きます。日本でも「闇市」で食料は有利な商品でした。

年率1000%のインフレが起きたと想定します。米1Kgが現在1000円で買えたとして、1年後には1万円になっています。2年後には10万円になっています。まあ、これは極端な例ですが、生活必需品の価格はインフレによって最も確実に高騰します。

食料は土地や株に比較しても確実に価値が貯蔵できるものの一つです。

■ 年金生活者を直撃するインフレ ■

インフレが最も影響を与えるのは年金生活者と失業者です。
日本の年金は物価スライド方式が採用されていますが、財政が破綻しかけた状態でどこまでこれが実行されるかは甚だ疑問です。

そもそも、老人福祉のコストから財政を救う為のインフレですから、老人に手厚く年金を積む事は考えられません。

日本国債のデフォルトや、インフレは貯蓄を沢山所有している老人世代から、若者世代への所得移動の手段ともなるのです。

「恐慌」による銀行破綻が進行すれば、老人達(私達も)は預金を引き出す事も出来ない内に、窓口封鎖から金融機関の倒産へと事態は進展するかもしれません。仮に金融機関が生き延びたとしても、ペーパーマネーが信用を失っていれば、預金は大分目減りしている事でしょう。インフレは金融機関にとっては有利に働くのです。

■ 食料は備蓄出来ないが、農業生産は備蓄できる ■

旧ソ連崩壊に伴う年金崩壊で、ロシアの老人達が生き延びられた理由の一つに、年近郊の家庭菜園の存在が挙げられます。ロシア人は土日を都市近郊の自家菜園で過ごす伝統があり、この自家菜園で年金崩壊後の老人は自給自足をしたと言われています。

年金が崩壊したら、日本の老人は同じ様に田舎で自給自足が出来るでしょうか?
終戦直後の世代はまさに親戚を頼って田舎に行った方も多いと聞きますが、今の日本の老人に農作業は無理です。

それでは来るべきインフレと食料高騰に備えて、今のうちに食料を備蓄しておくべきでしょうか・・・・。これは無理です。食料は場所を取りますし、適切は保冷施設が無ければ米とて長期間保存する事は出来ません。

しかし、考え方をちょっと変えれば、食料は備蓄出来ませんが、農業生産は備蓄出来ます。農地は毎年、ある程度決まった収穫を約束してくれます。





■ 農地に出資し、将来的な生産を確保すれば価値は保存出来る ■

1) 老人の貯金が紙切れになる前に、そのお金を今引き出す。
2) 「農業ファンド」を立ち上げ、休耕地など耕作地を買い上げる
3) ファンドの資金で農地を整備する
4) ファンドの資金で農家を助成する
5) ファンドの資金で若者を安く雇用する(場合によっては外国人でもOK)
6) ファンドのリターンは「新鮮な野菜やお米」の現物とする
7) 老人が亡くなった場合は、ファンドの権利は相続される

どうでしょう、子や孫にこの権利が相続出来て、取れたての美味しい野菜や果物やお米が確保出来れば、たとえ「恐慌」や「高インフレ」がやって来なくても損はしないと思います。

さらには、農村の環境整備の一環として、宿泊施設を完備して「農業体験」が出来るなんていうのも楽しいでしょう。

■ 「現物支給」こそが価値を保全する ■

以上は農業に限った事ではありません。インフレの時代においては、現在の価格で将来の現物の権利を確保する事でしか、資産価値が保全できないのです。

ですから、中国の様に、大量に保有するドルを、価値が下がる前に鉱山に変える政策は非常に理に適っています。しかし、海外の鉱山を保有する場合は、政治的リスクを伴います。ロシアの様に、採掘権を取り消されるケースは十分に想定内です。

その点、国内の農業が出資先なら、政治的リスクは軽減されます。冷害や口偶疫のような想定外の事態もありますが、ファンドを大型化し、全国に分散投資しておけば、ある程度のリスクはヘッジ出来ます。

■ 福祉政策と地方再生、環境保全で一石三鳥 ■

「現物支給型農業ファンド」は、今あるお金を将来の国民と国土の為に使うファンドです。

1) 今後予想される大量の若年失業者の受け皿になります。
2) そこそこに低い生産性により、休耕地を農地に回復します
3) 高齢化した山間部の集落を、若年労働力によって救います。
4) 「農村」という日本の原風景を保全します。
5) 地方経済を金銭経済から切り離し、現物経済に戻します。

アレ?良い事ずくしの様な気がしてきました。

ミソは「そこそこに低い生産性」と「貨幣経済からの切り離し」です。
これらは、近代資本主義に逆行しますから、多くの人が疑問を持つかもしれませんが、
農村が疲弊したのは、貨幣経済が農村にまで浸透したからです。

■ 貨幣こそが国民を奴隷化した ■

中央銀行が発行し、全国つつ浦々で流通する「貨幣」は便利な代物です。しかし、農村のきれいな空気は、貨幣に換算できません。きれいな水も、ゆったりとした時間の流れも、換金する事は出来ません。

何故農村や地方が疲弊したかと言えば、「農村の有する豊かさが貨幣に換算出来ない」からです。

現在の「お金至上主義」の呪縛から解き放たれなければ「現物支給型農業ファンド」は、新たな年貢制度と小作制度に成り下がります。

農村、あるいは漁村で働く者達が、金銭以上の価値を、環境や地域社会に見出せなければ、ファンドは成り立ちません。

■ 意識革命を生み出す「世界の崩壊」 ■

新たな「世界恐慌」と社会秩序の崩壊は、必ずや意識革命を生み出すでしょう。

明治維新と第二次世界大戦後の意識革命は、西洋文明への敗北によってもたらされた意識革命です。おのずと、西洋の優れたしシステムを取り入れる方向で革命は進行します。

しかし新たな「世界恐慌」は、西洋文明の敗北を意味します。そこからもたらされる意識革命は、反動的になるでしょう。ある一部の人たちは、都会の生活から田舎の生活に憧れるでしょう。

■ 「新世界秩序」からの独立 ■

今後成立する「新世界秩序」の力の源は、やはり「お金」です。「金兌換制」が復活すすれば、「金」がその源になります。

「金」を手元にも持たない私達は、「新世界秩序」にかしずいて、「従順な羊」となるか、あるいは新たな価値観を獲得して、「野のウサギ」になるかくらいの選択権は持っているかもしれません。

当然、支配者は従来通り「貨幣による支配」を強めていくでしょう。
「野ウサギ」になるのも楽ではありません。

・・・・まあ、いい年をこいたオヤジの戯言です。