その蜩の塒

徒然なるままに日暮し、されど物欲は捨てられず、そのホコタテと闘う遊行日記。ある意味めんどくさいブログ。

『はなとゆめ』

2014年04月16日 | 本・雑誌
 冲方丁(うぶかたとう)著『はなとゆめ』を読みました。清少納言が主人公の歴史小説です。28歳でも当時は中年で、遅くに内裏に出仕し女房となります。そして一条帝の中宮藤原定子様が、第3子を出産してすぐに亡くなるまで仕えました。そのお互いの信頼関係が揺るぎなく、機知にとんだ歌のやり取りも面白かったです。当時は一夫多妻でしたが、互いに「一乗の法」に則り頑なに一夫一婦制を信奉。とはいえ、恋多き女性でもあったようです。前半はややこしいところもありましたが、後半は藤原道長の凄まじいばかりの謀略があり、一気読みできました。

 清少納言の名の由来は目から鱗でした。父の姓の「清原」に夫の官職の「少納言」を重ねたものだそうです。またかなりの階級社会であったことも読み取れました。九品蓮台(くほんれんだい)といって、極楽浄土に往生する蓮の台(うでな)にも上から下まで九つの階級がありました。価値観の違いについては以下の通りです。
・自分の子に乳は吸わせない~乳母子(めのとご)に育てさせる
・女は夫や家族のみに顔を見せるべき
・男子は父親が育てるもの
・身分の低い者には姿を見せない
・清少納言も内裏に出仕当初は、日中姿が顕わになるのが嫌で夜に参上してました
・亡くなったり妊娠すると穢れを帯び、相当期間謹慎生活を送ることになる
・産後は産後で物忌み

 時代小説と違って殺伐としたものはありませんが、それでも政争のとばっちりを受け里に下ったことで枕草子を書くことになります。それは和歌でも漢詩でも日記でも物語でもない、既成のものから解き放たれた「なんとも名付けようのない言葉の群れを紡いだ」ものなんですと。

【漢字】
薨(こう)ずる
薨去(こうきょ)=薨逝(こうせい)
身分の高い人が死去すること。
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