私がNECに入社したのが1974年で、当時は通信といえば新しい技術はベル研究所から出てきて、事業者と言えばAT&T、メーカーと言えばルーセント、ノーテル(名前は違っているが)にドイツのシーメンス、フランスのアルカテル、スウェーデンのエリクソンが5強でNECは何とかこの中に割り込もうとしていた。
それが現在はルーセントはアルカテルに買収され、シーメンスはノキアに買収され、ノーテルは破綻してアメリカ勢は姿を消した。日本勢は鳴かず飛ばずで、中国の華為がアルカテルを抜く勢いである。つまり、エリクソン、ノキアーシーメンス、アルカテルルーセント、華為が4強である。アルカテルルーセントは業績が悪いと聞くのでそのうちに3強になるだろう。
これに端末のノキア、モトローラ、サムスン、LG、ソニーエリクソン、とルータのシスコ、さらにチップセットのクアルコムあたりが現在では存在感のある通信企業と言えるだろう。
私が入社したころは、通信と言えば電話とFAXくらいでインターネットもなく、パソコンもなく、携帯電話もなかった。携帯電話の端末とルータはまったく新しい事業ドメインなので新規参入があって当然であるが、インフラは電話網との継続性が大きく、新規参入は容易ではない。それでもこれだけ大きな勢力図の変化になっている。
この本質は当時新規の技術としてもてはやされていた光通信と、移動体通信のうち、移動体通信に注力した北欧勢は成功し、光通信に注力したアメリカ勢は失敗したということができるだろう。技術革新の度合いからいえばどちらも甲乙つけがたいものながらどうしてこのような差がついてしまったのかを考えてみたいと思う。