アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

「村上春樹VS中頓別町議」どっちがうわて?!

2014年02月25日 | Weblog
 オホーツク海側に、中頓別町、浜頓別町という「頓別(とんべつ)」が付く町があります。小頓別(中頓別町)、上頓別(中頓別町)、下頓別(浜頓別町)…うーん!頓別シリーズ!
 作家の村上春樹さんは、「とんべつ」という名の響きが好きらしい。とりわけ、「中頓別」がお気に入りの御様子。

村上春樹さんが「文芸春秋」(昨年12月号)で発表した短編小説「ドライブ・マイ・カー」。
 北海道中頓別町出身の女性が登場する。この女性が火のついたタバコを車の窓から捨てる場面。主人公は、「(火のついたタバコを車の窓から捨てる行為は)たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう」と、思う。

 きちんと読めば、「中頓別町民のマナーが悪い」とはならないことが分かるのだが。町議さんたちにとっては、「中頓別町は、タバコのポイ捨てが多いという誤解や偏見を生む」と、受けとめた。それで、議員有志による文藝春秋への質問状の送付となった。

 ちょっぴり笑えたのは、インターネットで中頓別町に抗議が殺到したこと。質問状を送った(6人のうちの)一人の町議のブログには…
 「無知な田舎者めが」「思想、心情、表現の自由。憲法から勉強しなおせ」など…炎上したんだと。中頓別町も町議さんたちも、「なんで、自分たちが責められるのか?」と、びっくりしたことでしょう。

 この一件、まずは村上さんの圧勝でしょう。「住んでおられる人々を不快な気持ちにさせたとしたら、それは僕にとってまことに心苦しいことであり、残念なことです」表現の自由がどうのこうのとは一切言わない。「単行本にするときには別の名前に変えたい」とも。

 では、中頓別町議会議員は惨敗か?惨敗どころか、大健闘ですね。どうして大健闘かって?
 この度の文藝春秋への質問状事件がなければ、北緯45度の「中頓別町」の名が、全国に轟くことはなかった。今年の夏は、観光客、野次馬、ミーハーがわんさか訪れますよ。手紙一通で、大きな経済効果をもたらす…。凄い手腕です。
 無名の作家が、「中頓別町では、火のついたタバコを車の窓から捨てる行為をみんながやっている…」と、書いても町議さんたちは出版社へ質問状は送らなかったでしょう。「村上春樹」という、ノーベル賞をとるかも知れない作家だから、町おこしのために…。

 えっ?町議さんたちは、中頓別町の知名度を上げるとか、経済効果等はまったく考えていなかっただろう。ながれで、たまたま良い結果が出たというだけだろうって? あ、あのね!たいした考えもなく、文藝春秋を買って読みますか!