昨日はライブ動画の撮影があり、楽しくもちょっぴり緊張の一日だった。。
その後はちょっと息抜きに本屋へ。
本屋さんに足を運ぶのもの久しぶり。
今日買った2冊は村上春樹の短編小説集『一人称単数』と高山羽根子著で今年の芥川賞受賞作の『首里の馬』。
まずは村上春樹、早速読みました。
ちょっとだけ感想を書いてみようかなと思います。
ここからはネタバレありです。
村上春樹の小説は3年前に『騎士団長殺し』を読んでから3年ぶり。
村上節ともいうようなリズミカルな文体と細やかな描写は短編でも如何なく発揮され、こちらをあっという間に物語の中に引き込んでしまう。
この感じが実に心地いい。小説ってこうじゃなくちゃね!!
実際には『文學界』という雑誌に2018年7月号から寄稿された7作に、書き下ろし一作を加えた8つの短編小説集なので、1つ1つの物語にはあまり関連性は見られない。
でも小説なのか随筆(エッセイ)なのか曖昧とした感じとか、事実のようでどこかしらファンタジーな感じとか、やっぱり村上春樹は独特だなーと思わされる。
どの物語もとっても好きだけれど、中でも一番心惹かれたのは、
『チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ』
主人公の「僕」が大学生の頃に書いた、架空のレコード批評。
1955年に亡くなったサックス奏者のチャーリーパーカーが、人知れず闘病生活を送っていて60年代になってボサノヴァに興味を持ち、アントニオ・カルロス・ジョビンと共演した録音テープが見つかったという設定で書いた架空のレコード批評から始まるこの物語。
物語の後半で、チャーリー・パーカーが「僕」の夢の中に現れ、実に『コルコヴァド』を演奏するシーンの、それはそれは美しい描写。
「その音楽をいったいどのように表現すればいいのだろう。バードが僕ひとりのために夢の中で演奏してくれた音楽は、あとから振り返ると、音の流れというよりはむしろ瞬間的で全体的な照射に近いものであったように思える。その音楽が存在していたことを僕はありありと思い出せる。しかしその音楽の内容を再現することはできない。時間に沿ってたどることもできない。曼荼羅の図柄を言葉で説明することができないのと同じように。僕に言えるのは、それは魂の深いところにある核心にまで届く音楽だったということだ。それを聞く前と聞いた後では、自分のからの仕組みが少しばかり違って感じられるような音楽──そういう音楽が世界には確かに存在するのだ。」
(本文65ページより転載)
主人公の「僕」が夢の中で聞いたその音楽を、あたかも私自身も知ってるような気さえしてくる。
音楽もない、映像もない、文字だけでこれだけの感覚を人の心に呼び起こせることができる文章ってあるんだなあ〜って感心します。
作曲とかレコーディングとか、ジャケット作成とか、右脳を酷使する日々だったので、脳内の言語野とイメージ野が刺激されるこの感覚が脳内マッサージみたいで気持ちいい〜。
もう一つ好きだった物語は『クリーム』。
ここでは主人公の「僕」が予備校に通っていた頃、ある女の子から招待されたピアノの発表会の会場に出向くも、その場所は門が閉まっていて人っ子一人いなくて、僕は途方に暮れてしまう。
仕方なく座っていた公園の四阿(あずまや)のベンチで突然現れた老人に言われた言葉。
「中心がいくつもある円や」
「ええか、きみは自分ひとりだけの力で想像せなならん。しっかりと智恵をしぼって思い浮かべるのや。中心がいくつもあり、しかも外周を持たない円を。そういう血のにじむような真剣な努力があり、そこで初めてそれがどういうもんかだんだんに見えてくるのや」
「きみの頭はな、むずかしいことを考えるためにある。わからんことをわかるようにするためにある。それがそのまま人生のクリームになるんや。それ以外はな、みんなしょうもないつまらんことばっかりや。」
(本文より抜粋)
人生ではたまに、何故そうなったのか答えの出ない、説明のつかない出来事が起きる。
そういう問題に出くわした時、私たちの頭はしばし固まってしまう。
だけど。
それはきっと「しょうもないつまらんこと」なのかもと思う。
それは新型コロナであり、オリンピックの延期であり、豪雨災害であり、ありとあらゆる不条理なことであり。
そういう出来事に出くわした時にこの物語を思い出したい。
私が考えたい「むずかしいこと」は何か?
人生のクリームをいつか味わえる日に向けて、私は私の頭で考えていかなくちゃね。
あ、あと『謝肉祭』という物語の中で使われた、ルビンシュタイン演奏のシューマンの「謝肉祭」のYou Tube動画をチェックしたら、「『一人称単数』からきました」というコメントが何件かあって、やっぱり本を読んで曲を聴いてみたくなった人っているのね〜と感心。もちろん、私もその一人です。
また聴きたくなるかもしれないので、ここにも紹介しておきます。
さて。
またそろそろ新曲を書こう!!
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