オレンジな日々

広島在住のシンガーソングライター&ピアニスト
三輪真理(マリ)のブログです。
音楽大好きな日常を綴っています。

映画『Coda コーダ〜あいのうた』(ネタバレあり)

2022-07-22 | おすすめ映画

『Coda コーダ〜あいのうた』をAmazon Prime Video で鑑賞。
2022年アカデミー賞4部門を受賞した作品。
劇場公開の予告編で見たいなあと思ってはいたんですが、公開中は見損なって自宅での映画鑑賞となりました。
ちょっとだけ感想をレポしてみたいと思います。(以下ネタバレあり)


まずは作品紹介。
「家族の中でただひとり耳の聞こえる少女の勇気が、家族やさまざまな問題を力に変えていく姿を描いたヒューマンドラマ。2014年製作のフランス映画「エール!」のリメイク。
海の町でやさしい両親と兄と暮らす高校生のルビー。彼女は家族の中で1人だけ耳が聞こえる。
幼い頃から家族の耳となったルビーは家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。
新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の先生は、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるが、 ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。
家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが……。」
(映画.comより転載)


コーダって勝手に音楽用語のCODAマークのことかなと思っていたんですが、Children of Deaf Adult の略で、耳の聞こえない親をもつ子どものことだそう。
主人公のルビーは両親と兄が耳が聞こえず家族で一人だけ耳が聞こえる子ども。
毎朝3時に起きて家族の漁業を手伝いそれから学校へ行くという毎日。
ルビーが住んでいるのが自然が豊富な田舎町で家族の仕事が漁業という映画の設定もちょっと新鮮でした。
家族4人が本当に仲が良くて、クスッと笑える微笑ましいシーンもたくさん。


この映画のルビー以外の家族3人はもともと耳が聞こえない俳優さんから選ばれたそうです。
耳が聞こえないことがオーディションの条件になるって珍しいですね。
なるほど演技も手話も違和感がなくて本当に自然体でした。
お母さん役のマーリー・マトリンは『愛は静けさの中に』で主演女優賞も受賞した女優さん。
お父さん役のトロイ・コッツァーも今回の作品で助演男優賞を受賞。
このマーリーとトロイの2人の演技が、ほんとにコミカルでホロっとさせるとても素晴らしい演技で、家族っていいな〜って思わせてくれました。


アメリカでは、音楽でも映画でも舞台でも身体障害者の人たちがどんどん活躍していて、才能があればどんなことでもチャレンジしていい感じがあります。ラスベガスで観たマイケルジャクソンをオマージュしたシルク・ド・ソレイユの『ONE』とう作品の舞台にも確か義足のダンサーが出演していたと思います。
日本ではまだまだ身体障害者の俳優さんは少ないので、そういう人たちにもっともっとチャンスが開かれるといいですね。

作品の中で、ルビーのコーラスクラスの発表会で、ルビーと同級生のマイルズがデュエットを披露するというハイライトシーンで、途中から無音になるという演出があるのですが、これはルビーの家族の感覚を映画を観ている私たちにも疑似体験させる独特のシーンでした。
無音の演出は『ドライブ・マイ・カー』でもありましたが、光も音が溢れかえった今の時代、結構長い時間の無音の演出は特別な感覚を沸き起こすものだなと思いました。
耳が聞こえない人の気持ちが少しはわかったような気がしました。


人々の多様性を受け入れようというダイバーシティの取り組みはいろんな分野で進んでいます。
人やモノや情報の行き来が増えれば増えるほど、他人やほかの文化を理解することはさらに重要になってきますね。


他人の全ては理解できなくても、わからないことを少しでもわかろうとしたり、人と人は違いがあって当然で嫌ったり恐れたりする必要はないという感覚が持てたら、いろんなことがもっと楽しくなってくるんじゃないかな、と思います。


『Coda コーダ〜あいのうた』の公式サイトはこちら
今ならAmazon プライムで無料で観られます。(紹介はこちら
まだ観てない方はぜひ。



宮部みゆき著 『ソロモンの偽証』 全6巻(ネタバレあり)

2022-07-19 | おすすめ本

宮部みゆきの『ソロモンの偽証』文庫本全6巻、読了しました。
ようやく、という感じ。
この映画をDVDで見たのが今年の3月。
その時のレポはこちら(2022年3月12日の日記)。


それから何となく原作も読んでみようかなと思い立ち図書館で、借りては返し借りては返しを繰り返し、やっと文庫本で6巻全部を読み終えました。
ほんとに面白かった。
一気に、という風にはいかなかったけど、読み応えがありました。


当たり前だけど、映画には描かれていない登場人物それぞれの背景や心の動きなども丁寧に描かれていて、宮部さんの文章力にグイグイ引き込まれました。予めストーリーを知っていたので最後のどんでん返しにはそれほどビックリはしなかったけれど、途中の緊張感やハラハラドキドキと読後の爽快感は映画と同様、ほんとに楽しめました。


何より、中学生の自殺という扱ったテーマの重要性や深刻さ、そしてそれを取り巻く大人たちやマスコミの視点など、当事者と外部の人の心のずれなども丁寧に描かれていて、フィクションなのにまるでノンフィクションのように心に迫ってくるものがありました。


ここからはネタバレありで、内容のことに触れてみたいと思います。
この物語は第一部「事件」、第二部「決意」、第三部「法廷」と分かれています。


中学2年生のクリスマスの終業式の早朝、雪の中から同級生の遺体が発見される、という始まりはもちろん映画と同じ。柏木卓也という同級生の死は一旦は屋上からの飛び降り自だ殺と断定されたが、それが実は他殺だという告発状が届いてから事態は一変し、学校、警察、テレビのワイドショーを賑わす事件へと発展していく。
主人公の藤野涼子は3年生の夏休み、中学2年生の時に起きたこの事件の真相を明らかにすべく学校内裁判を思い立ち、真相究明に乗り出す、というストーリー。


物語の場面は、主人公だけでなく登場人物それぞれの視点から描かれ、そこから見える景色、心の動き、気づき、など、どんどん変わっていくのがとっても面白かった。
これは映画ではなかなかできない手法だと思います。


ただ一人、描かれないのは「柏木卓也」の視点。
映画では、大出俊次ら3人組から三宅樹理がイジメを受けているのに助けられない藤野涼子に、
「口先だけの偽善者だ」と柏木卓也が罵るシーンも出てきますが、それは原作にはもともとありません。
柏木卓也がどんな人物で何を考えていたのかは、柏木視点では一切描かれていません。
辛いことがあると「もう死んでしまいたい」と短絡的に思いがちな10代の心。
「死んだら何も言えない」
「死んだらダメだよ」
作者はこんなメッセージを込めてるのかな、とも思いました。


子どもの頃から病弱で人生を達観していた柏木卓也は「人生を無意味」だと感じていて、死に対して強い興味がありました。一方でアル中の父が酔った勢いで奮った暴力で母が死に、その罪の意識で病院で自殺した父を両親に持つ神原和彦は死を背負いながらも養父母の元、明るく前向きに生きていました。
人にはそれぞれその人にしかわからない事情や悩みや苦しみがあります。
人生ってそれぞれが自分の十字架(運命)を自分の背負い方で背負って生きていくものです。


神原に「アル中の人殺しの子供の人生に、前向きに生きて行く価値なんかあるもんか」と罵った柏木。
病弱で両親から腫れ物にさわるように扱われていた柏木には、自分には理解できないその人なりの十字架とその受け止め方があることに気づけなかったのかもしれません。


学校内裁判で大出の弁護人を務めた神原の助手の野田健一が、世の中の何もかもが嫌になり、特に自分の両親が憎くなって手にかけようとしたことを、神原に打ち明けようとしたシーンがあります。
「今まで黙っていたんだけど、、」
その時に神原が「今まで黙ってたことなら、今も言わなくていいよ」とそっと遮るシーン。
「そういう種類の話は、黙ったまんまにして方がいいんだ。しゃべっちゃおうと思うのは気の迷いなんだ」


中学生くらいの時って悩みや本音を打ち明けるのが友だちだって思っているフシがありますね。
確かに悩みを共有することで深いところまでつながりを感じることができるのかもしれない。
だけど一方で、悩みや本音を打ち明けなくてもそばにいてあげられる友だち関係もある。
人生には黙っていた方がいいこともある。
自分の十字架を人にまで背負わせる必要はない。
友だちでいるために何もかもを知らなくてもいいのでしょう。


人は生きていればやがて必ず死にます。
死ぬまで自分の十字架を背負って、生きている幸せを感じながら自分の意思でちゃんと生きたいものです。
そして思う存分生き切った先に「人生の意味」が見いだせたら本望だなと思います。


中学生のお子さんをお持ちの方や実際に中学生の皆さんにも一度は読んでみて欲しい作品。
「作家生活25年の集大成にして、現代ミステリーの最高峰」と紹介されています。
興味を持たれた方は、ぜひご一読下さい。

 

 

 


八代でライブ

2022-07-01 | バンド関連

7月になりましたね〜〜〜!!
あっという間に梅雨も明けてとっても暑いです。


8月にPeppermint Leaf で八代ツアーに行くことになりました。
4年ぶりの故郷八代でのライブです。
今から楽しみです。


ということでライブの案内はこちらです。
ジャーン!!!


Peppermint Leaf Live in Yatsushiro
日時:2022年8月11日(木祝)
   18時半オープン、19時スタート
出演:Peppermint Leaf
    三輪真理(Vo&Pf)
    石井聡至(Cho&Dr)
    岩藤洋(Cho&Ba)
オープニングアクト:Mellow Five
場所:レストランバーZ
   (熊本県八代市本町1-2-24 Tel 0965-32-1787)
料金:2500円(1ドリンク付)
お問い合わせ:レストランバーZまで


八代の皆さまにお目にかかれることを楽しみにしています。