ほぼ10日間に渡って連載してきた『ホンキの作曲術』も今回がいよいよ最後です。
今日は(応用編)の(4)イントロ、間奏、エンディングにもひと工夫 です。
楽曲は基本的には歌メロ(歌詞の付いたところ)に意識が向くものです。
でも現代のロックやポップスは基本的には伴奏もあってのものなので、イントロや間奏やエンディングをどのようにするかはかなり重要なポイントです。
イントロや間奏やエンディングを含めての楽曲だという意識を持ちましょう。
最初の「骨格を意識する」のところで紹介した「Let it be」に代表される曲のように本来なら歌メロであるはずの「Aメロ」をインストで演奏する(間奏扱い)にする曲は少なくありません。そうすることで聴く人に「間」(想像する時間)を与えることができます。
例えば有名な「上を向いて歩こう」の二番のAメロの半分は口笛ですが、ここに歌詞がないことはやっぱり粋です。
歌詞に春−夏−秋だけで、冬がないことも聴く人の想像力をかき立てますよね。
これぞ「削ぎ落としの妙」だと思います。
作家にとっては勇気がいるけど「語りすぎない」って大事ですよね。
そして曲には「始まり」があれば「終わり」がある。
お料理ならオードブルからデザートまででフルコース。
いわゆるデザートにあたる「終わり方」にもこだわりを持ちたいですね。
エンディングの最後のコードを何にするか。これにもいくつか方法があります。
まずはきちんと終止形のストレートなコードで終わる。これは基本です。
でもこれではあまり面白くないなと思ったら他の方法も使えます。
例えば曲の最後で同主転調をする。
短調(マイナーコード)の曲なら最後の最後のコードだけメジャーコードにする。
スピッツの「ロビンソン」などがいい例ですね。
次にサビやエンディングの途中でスパッと切る。曲に勢いが生まれます。
宇多田ヒカルの「Automatic」など。
あとは代理コードで終わる。
例えばハ長調(C調)の曲ならAメジャー、Aフラットメジャーセブン、Fメジャーセブンなど。
曲に余韻を残します。これはわりとライブでは使われることが多いですね。
そしてレコーディングで用いられる王道はサビメロを繰り返しながらフェードアウト。これは最後までしつこくサビメロを繰り返すので記憶に残りやすいわけです。
これは有名なビートルズの「All You Need Is Love」です。
なんとイントロはフランス国家「ラ・マルセイエーズ」が使われています。
そしてエンディングにはサビをしつこく繰り返しながら、そのバックでバッハのインヴェンション、グレン・ミラーの「インザムード」、イギリス民謡の「グリーン・スリーヴス」そしてビートルズ自身の「She Loves You」が入ってます。わかりますか?
遊び心満載のビートルズ、盛りだくさんすぎますね。
私もいつかイントロに「君が代」でもこっそり入れてみようかな(爆)。
ということで、『ホンキの作曲術』基礎編1~4、応用編1~4と書いてみました。
いかがだったでしょうか?
難しかったですか?それとも簡単すぎましたか?
皆さんのご感想はコメント欄やFacebookやメールでお待ちしています。
『ホンキの作曲術』は言い換えれば『キホンの作曲術』でもあります(笑)。
まずは作曲の基本をお伝えできればと思って書いたので、お読みになった皆さんはこれ知った上でどんどん自分の個性を追求していかれるといいと思います。
基本の型をわかってそこからあえて「外す」のはオシャレで個性ですが、基本がわかってないのはただのデタラメです。
なんでもそうですが、いい曲を作りたかったらいい曲をたくさん聴くこと。
そして最初は真似でもいいからとにかく作ってみることが大事です。
初めから名曲は生まれません。最初の10曲くらいはボツにする覚悟で作り始めましょう。
そして何より「本気」で渾身の一曲を作ろうと思うこと。やはりこれに尽きます。
せっかく音楽という形のないものにチャレンジするんだったら、100年先の人にも聴いてもらうという壮大な目標を持ちたいものです。
そんなのムリですか?クラシックの作曲家にはできたことです。
あなたにもひょっとしたらできるかもしれません。
命がけとは言わないまでも、本気で作ることはやっぱり大事です。そして本気で書いた曲を信頼できる誰かに聴いてもらって正直な感想をもらいましょう。
批判は怖いですか?自分の曲に絶対的な自信があれば、何を言われても平気です。
音楽人生のうちに1曲でも、自分の代表曲という曲が作れたら最高ですね。
そんな壮大な夢を描きながら共に楽しく音楽人生を歩んで行きましょう。
最後までお読みくださってありがとうございました。
最後に紹介するのは山下達郎の「クリスマス・イブ」
この曲はもともと竹内まりあのために書かれた曲で、プロデューサーに「つまらない」と言われてボツになった曲らしいです。それを達郎さんが自分のアルバムにこっそり入れた。それが何年も後に大ブレイクすることになるんですが、達郎さん自身がこの曲をただのボツ曲にしたくないという愛情がこの曲をミリオンヒットに導いたのかなと思います。
あなたが自分の曲(音楽)を愛する気持ちが本物なら、誰に否定されようと捨てる必要はありません。
「歌っていうのは自分の手元を離れた後に意味合いを変えて、聴く人の意志が加わるものなんですよ。今回は特にそれを感じました。一番の典型は「クリスマス・イブ」なんだけど。」
(参考:山下達郎の名言集)