あれは,あれで良いのかなPART2

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AIGのゴールデンパラシュートに90%課税,日本でもやれるか?

2009年03月21日 22時31分27秒 | 経済全般
公的資金を注入することになったアメリカのAIGの役員が巨額ボーナスをもらうことになった点に国民からの非難が集まったことを受けて,下院ではボーナスに90%課税する法案を可決しました。
今後,上院で審理して,法案が成立すればボーナスほぼ全額を国が回収できることになりますが,一方で,上院では,法律不遡及論や契約を根拠とした国家賠償訴訟などを懸念し,慎重論がでており,即時可決は難しいといわれています。

AIG巨額ボーナスを阻止!米下院、90%課税法案可決(読売新聞) - goo ニュース

契約社会なので,法律でがっちりやるべきだった

この問題ですが,前提として,日本の尺度でみると理解できない部分があります。それは,「役員が巨額のボーナスをもらえる」という点です。
実は,日本の会社法もそうですが,経営者たる役員は,一方では経営責任をはじめとする各種責任を負う反面,会社が成功すればそれなりの報酬をもらえることになっています。ただ,日本の場合,役員といっても「サラリーマン役員」の場合が多いため,ものすごく高額な報酬をもらうという発想があまりないことから,「巨額ボーナス=嫌悪感」になりやすいと思います。
ところが,アメリカは契約社会ですので,役員としてその会社に勤めた場合,最初に報酬を契約で決めるため,基本的には何があってもその報酬を支払わなければなりません。もちろん,会社の経営に失敗した場合の賠償責任も計り知れないものになります。
したがって,AIGの場合も,基本的には経営再建のために役員を呼んだとすれば,契約上報酬は支払わなければならない,っていうことになるのです。

もちろん,心情的には,どう見たって,「公的資金投入会社で巨額ボーナスを支払うのは,税金泥棒みたいなものだ。」っていう批判は避けられないと思います。しかし,くまでも契約が優位されますから,現状ではなすすべはありません。
したがって,今回,「課税で対応」という救済策を政府が考えたということになります。
しかし,これも非常に危険な話なのです。つまり,完璧な「後出しじゃんけん」的法律なわけですから,役員からすると,「あきらかに後から自分達だけを狙い撃ちした法律であり,明確性もなければ,客観性もないので,違憲だ」という反論が予想され,そのような訴訟になる可能性も高いです。
しかも,アメリカのことですから,裁判所はこれを認める可能性は十分に考えられます。
つまり,アメリカ的に考えると,AIGの役員の巨額ボーナスは,あながち「ふざけるな」的なものとは言い難いのです。でも,心情的には,やはり「ふざけるな」となるでしょう。

このようなことを防止するにはどうすればよいかというと,会社法に明記するか,公的資金注入の際に制定される特別法に明記するなどという「事前抑制」しかないのかな,と思います。
このへんは,アメリカの動きをもう少し見ておく方がいいでしょう。

ところで,この類の話,日本ではどうでしょうか。10年前に公的資金を注入した際,各銀行は軒並み役員のボーナスはもちろんのこと,給与もかなり減らすという経営努力をしてきました。したがって,今回のような騒動はありませんでした。
しかし,これからもまた公的資金注入の可能性は考えられます。また,今回は,銀行以外にも,保険会社や証券会社を対象にする可能性もあり得ます。
そうなると,前回はたまたま日本特有の道義的理由で問題にならなかったが,今回は,外資系企業もあることを踏まえると,アメリカ同様の問題が生じうることになります。
すると,今のうちから,何らかの法的準備をしておくべきなのではないでしょうか。
ついでにいうと,公的資金を注入された企業は,「政治献金は不可」という仕切も設けなければなりません。これも,税金の横流しになってしまうからです。もっというと,公的資金を注入する企業については,過去数年分の政治献金は全額回収するくらいの厳しい規制も必要でしょう。まあ,これはさすがに非現実的かもしれませんが,少なくとも,政党側で「道義的責任」は感じるべきかなとは思います。

それともう一つは,「自治体破綻」の場合です。夕張市で問題となりましたが,破綻直後に,通常額のボーナスが支給され,批判の対象となりましたが,現行法ではボーナスは先に条例で決まっている以上,逆に支払わないことが違法となってしまいます。また,首長や議員が自主返納することは,公職選挙法に抵触する行為となってしまい,これまたできないという足かせもあります。
公的資金注入事例とは若干事例は違いますが,このあたりもある程度は法整備をするべきところでしょう。「税金を横流ししている」という批判を受ける点では公的資金に似ていますから・・。

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