あれは,あれで良いのかなPART2

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基地とでるか,凶とでるか,岩国市の住民投票

2006年03月14日 20時02分48秒 | 地方自治
岩国市において,米軍基地の移転に伴う拡張計画の是非を問う住民投票が実施され,反対多数という結果になったようです。
これに対し,住民投票の是非自体も含めて,様々な議論が飛び交っています。

住民投票っていったい何?

住民投票とは,住民の意思を直接政治に反映することができる制度の一つであり,いわば直接民主主義の代表といわれています。
一方,議会とは,選挙によって選ばれた代表者である議員が,住民の意思が反映された人であるとしてそれを政治に反映させることから,間接民主主義といわれています。
そして,国政も地方自治も,議会制民主主義,すなわち間接民主主義をベースにしています。
そんな中,今回,岩国市では,住民投票条例を制定していたために,米軍基地の問題について住民投票という直接民主主義を部分的に採用したわけです。

一見,住民投票とは「住民の意思が直接反映できるのだから,ベストな方法なのではないか」と思われがちです。中には,「議会なんていらない」という意見さえあるくらいです。
しかしながら,実は,住民投票等直接民主主義には,次のような問題点があるのです。
1 大所高所から見た意見が反映されず,自分勝手な結論に向かいやすいこと(住民はどうしても目先のことや自分の生活のことしか考えないため,結局,場当たり的な投票結果になってしまう可能性が高い。)。
2 ある有力者の意見に反映されやすいこと(住民の100%が自分で判断することができないため,そうなると結局は町の有力者の意見に左右されやすくなる。)。
3 誤った情報や,意図的な情報操作により,誤った投票結果を招くおそれがあること(行政や権力者によって恣意的に情報操作が行われることによって,公正な判断が阻害され,結果が誘導される可能性がある。)。
4 「住民投票の結果」を大義名分にして,事業内容などをろくに調査検討することなく為政者によって政治が進められてしまうおそれがあること(「住民がOKと言ったからやります」という住民に責任を押しつけた形で事業を推進するおそれがある。特に3と併用すると,完全に恐怖政治となる。)。

もちろん議会制民主主義も万能ではなく,様々な弊害はあります。しかし,議会制民主主義の場合,最大のメリットは,「政治のプロが様々な視点から多角的に物事を検討して結論を出している」という点にあります(現実に議員がそこまでがんばっているかどうかは別の話ですが。)。
従って,議会をないがしろにするのではなく,むしろ議会や官僚が示している内容について,賛否両論があり,かつ住民の世論も賛否両論がある場合など,「これから歩む方向性」を問うという場合には,住民投票制度を併用するということが有益なのではないかと考えます。

さて,今回の岩国市の場合はどうでしょうか。今回の住民投票は,あくまでも「米軍基地の拡張」に対する問題であり,基地それ自体の是非を問うものではありません。また,議会では,既に全会一致で反対の意思表示をしています。
とすれば,少なくとも賛否両論あり,かつ住民の世論も賛否両論があるという事例ではないと思われます。もし,基地それ自体の存否を問うという内容であったとすれば,これは賛否両論がある事例であったといえるため,住民投票を行う価値はあったといえますが,今回のケースでは,はっきり言うと住民投票を行う必要なかったと言えるのではないでしょうか。

もっとも,今回の住民投票に対しては,「合併前の無駄な投票である」,「市長選挙のためのパフォーマンスだ」などの批判がありますが,これは枝葉末節な批判にすぎません。住民投票反対派の方々は,様々な活動を行ってきましたが,少なくとも報道として現れている限りでは,残念ながら枝葉末節論に終始してしまった感じが否めません(もちろん,報道に現れない部分では本質論について議論していたのかもしれませんので,断言はできませんが。)。
また,「国政の内容を住民投票で決めるのは越権行為だ」と防衛庁長官や安倍官房長官などが皮肉っていますが,基地の有無や拡張の有無によって,住民の生活環境に大きな影響を与えるという観点からすれば,必ずしも国政の内容とは言い切れず,越権行為の住民投票とはいえないと考えます。平たく言えば,別の町で行った,原発建設の是非を巡る住民投票と性格は同じです。これらの言動については,あたかも「国の政策が最優先であり,住民の生活環境なんて国の犠牲になって当然だ」と言っているのに等しいのではないでしょうか。

私見ですが,住民投票制度は,議会制民主主義が崩壊している場合(議員が仕事をしない,議会と首長との見解が常に相反している場合など)には,極めて有効に機能しうるものであるといえます。しかし,一方で住民投票は,必ずしも先を見通した投票結果になるとは限りません。従って,住民投票を多用することは,時には「無計画な行政」となってしまうおそれもあります。
今回の岩国市の住民投票制度については,他にも有権者資格の問題,国と地方のあり方の問題や,国政に対する住民投票の可否の問題など,実はもっと沢山議論するべき事項はあります。
これを機に,住民投票とはどういうものなのか,今何が問題であり,どこをどう改善すればよりよい制度になるのか等について,他の地方自治体においても本質論について議論をしてほしいと思います
もちろん,報道機関についても,岩国市長の私的内容についての賛否などといった枝葉末節論にとらわれることなく,今回の件の本質論について,もっと研究して報じてほしいものです。これによって,住民投票に対する本質的な世論が形成されることでしょう。
すべては,住民生活の向上のためです。

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