しとと、しとしと、ししとと、ととと、としとしとし。雨音がしている。それぞれ少しだけ違う音、違う音を楽しんでいる。雨。雨とわたし。雨は、わたしと同じように、こころを持っているようにも思えて来る。もうすぐ夕方の5時半になる。
南向きのベランダの上は、明るいスレート葺きの屋根。屋根の上には2階ベランダ。長細い物干し場。そこにもスレート葺きの屋根がついている。雨が落ちてくる。しととしととと、としとし、しとと、ととんと落ちて音を立てる。
しとと、しとしと、ししとと、ととと、としとしとし。雨音がしている。それぞれ少しだけ違う音、違う音を楽しんでいる。雨。雨とわたし。雨は、わたしと同じように、こころを持っているようにも思えて来る。もうすぐ夕方の5時半になる。
南向きのベランダの上は、明るいスレート葺きの屋根。屋根の上には2階ベランダ。長細い物干し場。そこにもスレート葺きの屋根がついている。雨が落ちてくる。しととしととと、としとし、しとと、ととんと落ちて音を立てる。
午前8時から10時まで、2時間、一輪車に椅子と農具を載せて、北の畑に行って、畑仕事をしました。カラスが上空から眺めてときおりカーカーと鳴きました。
春先に植えたのに、暑さで根付けず枯れてしまった薩摩芋の蔓を、新しく買って来た蔓と植え替えました。20本の蔓では不足しましたから、また午後から買い求めてきます。
薩摩芋の蔓は暑さで枯れてしまっても、雑草は枯れずに生き残って、我が物顔の繁栄を誇っています。まずはこれから退治に掛かります。根が深くて、力仕事になります。
薩摩芋の蔓を植え終わったら、隣の畝の里芋の畝に回り、草取りをしました。里芋には鶏糞肥料をどっさり撒いておいたので、その分余計に、栄養分を横取りした草がジャングルを作っていました。
さいわい、雨が降らずにすみました。帰宅して、お風呂場に直行。シャワーを浴びて爽やかになりました。たいしたことはしていないのに、シゴトヲシタゾという満足感があります。
「山中与幽人対酌」 李白
両人対酌 山花開く
一杯一杯復(また)一杯
我酔うて眠らんと欲す 卿(きみ)且(しばら)く去れ
明朝 意あらば琴を抱いて来たれ
*
わたしも李白になります。なりすまします。風呂の中でいい気持ちになって詩吟を吟じます。
*
「幽人」は山中の隠者。世に現れることを嫌って、世を隠れています。世捨て人の仙人道は幽邃道。好きなことをしてひっそり暮らします。気の合う隠者仲間が来て、竹林で琴を掻き鳴らしながら、詩を吟じ、酒を飲み交わします。琴の糸が切れてていれば、琴を鼓にします。
時は春。春の山に山藤の花が咲いて、ぷらりと垂れて、酔狂の興を深めます。興が深まれば、一杯は二杯になり三杯になり、すぐに酔いが回ります。飲みっぷりがいいのです。すると酩酊します。眠くなって横になってしまいます。早い者勝ち。目が閉じてしまいます。「今日はこれまでとしよう。明日の朝、目が覚めて、もしまた会いに来たくなったら、その時はまたそのおんぼろな琴でも抱いて、この山中に来ておくれ」
万古の憂いを消す忘憂酒。湿っぽさがない。三百六十日 日々酔うて泥の如し。1年の内で飲まない日はたったの5日しかない。ときにこの詩を書いたのは李白56歳の頃であった。
「我酔うて眠らんと欲す 卿(きみ)且く去れ」は、李白が憧れた詩人陶淵明の詩にさかのぼっている。
*
このわたし、お爺さんのわたしは、李白の詩が好きだが、そんなに酒が飲めない。晩酌は日本酒の1合2合止まり。スケールがよほど小さい。世捨て人(捨てられ人)だが、隠者仲間がいるわけでもない。李白の詩に酔って、歌って、ちょこんとしているキリだ。
いいなあいいなあいいなあ。おれが今日を生きている。いいなあいいなあいいなあ。一人つぶやいて、悦に入る。
いいなあいいなあいいなあ。朝風がおれのところにも吹いて来る。涼しくなったおれは、そこでまたいい気持ちになる。
万事、向こうから向こうから。いいことが向こうから向こうから。おれのところへおれのところへ。どうぞどうぞを言いに来る。
いい気持ちになって、おれは、遠慮なく、いいなあいいなあを口にする。口にしなくったって、同じ。いい気持ちはいい気持ち。心身快感。心愉快なれば、身体愉快。
朝の8時を過ぎた。さ、お爺さんは飯にしよう。
羨むな羨むな。
羨まないでいれば、気楽。爽やかでいられる。
オレの特技は羨まないところ。
つまり「万人対等」「万人平等」「万人同価値」だということを知っている、ということだ。
*
空は、分け隔てがない。万人が対等に夏空を仰いでいられる仕組みになっている。何処までも何処までも広がって無際限。空が無際限なのに、それを仰いでいる己が際限をつけることもあるまい。
山の緑は、分け隔てをしない。同価値を崩さない。どっしりとして落ち着き払って、その落ち着きを万人に同量ずつ配布する。
風の爽やかなことは、万人平等になっている。花の美しいことは、不変だ。誰の前でも美しい。谷水に足を浸せば冷たくなる。万人共通。万人同価値に与れている。不足のあろうはずもない。
*
今日をいただこう。ともかく今日を頂こう。おいしくいただこう。
李白一斗詩百篇 (李白一斗 詩百篇)
長安市上酒家眠 (長安市上 酒家に眠る
天子呼来不上船 (天子呼び来たれども 船には上らず
自称臣是酒中仙 (自ら称す 臣は是 酒中の仙と)
*
是は杜甫の詩です。李白を讃えています。
*
李白さんは酒をぐいぐい飲み干して一斗も飲んでしまうが、それだけでは終わらずに、詩が百篇もつぎつぎに出来上がって来る。まったく李白さんには叶わないよ。誰も叶わないよ。
都の長安の町中の飲み屋さんで酔い潰れて眠っていると、時の天子が彼に詩を書かせようとして呼びに来るが、知らん顔、遣わされた船にも乗ろうとしない。不届き千万。自分で自分のことを「おれさまは酒に隠れているだけの隠者よ」と称して誰憚ることもない。
*
いいなあ。詩が百篇もできるのかあ! 酒を嘗めたら、たちどころに、どどろどどろと百篇の詩が生まれて来るのかあ!
駄作だったらこのオレにもできるけれど、豪放磊落な李白になると、詩の百篇がみな不朽の名作の百編である。
ま、よかろう、酒好きなところだけなら真似ができるんだから。よしとしようよしとしよう。万事をヨシとして生きるのが特上。羨むまい。羨まないのも特技の一つ。ここで勝負だ。
何を喜んでもいい。
どうぞどうぞしている。
あなたの好きなだけ好きなように、という具合に、どうぞどうぞしている。
*
案外、何でも喜びになる。
大小を問わなければ、だが。
*
雨が降って、大地を潤しているのを見る。これもよろこびになる。
風が吹いて、夏の木陰を爽やかにしていると、これもまた、よろこびになる。
光があたりを明るくしてくれている、これもよろこびになれる。
*
安上がりなお爺さんだ。あたりからふんだんに喜びをもらって来て、にこにこにこりとしている。
タイガーマスクメロン、2個目をみっけ!
*
雨が降って、メロン苗が蔓を四方にぐんぐん伸ばして来た。緑の葉っぱがいかにも健康そうだ。
蔓の間に生えて来た雑草を抜いて上げた。するとメロンが蔓に実を着けていた。まだ小さいけど。発見が嬉しい。
*
嬉しい発見を、よぼよぼのお爺さんに、提供してくれたメロン苗さんに感謝だ。
終日家の中にいるのは気詰まり。上手い具合に雨が止んだので、作業着に着替えて外に出た。蚊取り線香を腰にぶら下げて。
午後3時から5時まで、畑に出て農作業をした。途中で雨が降り出してきたが、作業を続行した。農作業と行っても、たいしことをしていない。
昨日の風雨で、鈴なりのミニトマトが倒壊してしまっていたので、支柱を補強して助け起こしてあげた。どっさり赤い実を収穫した。助け起こされたミニトマトさんがよろこんだろう。
その後は、オクラの畑、落花生の畑の草取りをした。抜いた草はバケツに集めて、何度も枯れ草の山に捨てに行った。お爺さんがしばらく畑に遊んでもらった、って感じだ。ま、これで退屈が凌げた。
*
下着までズブ濡れになってしまった。重たくなった。風呂場に直行して、シャワーを浴びた。石鹸で体をゴシゴシ洗って、爽やかになった。(娘っこではないお爺さんは、しゃれたシャンプーを使わない)