もう一首、李白の詩を読む。おいしいおいしい。我が魂の胃袋氏がご満足。ご酩酊。
*
「将進酒」 李白
君不見黄河之水天上來
奔流到海不復回
君不見高堂明鏡悲白髮
朝如青絲暮成雪
人生得意須盡歡
莫使金尊空對月
天生我材必有用
千金散盡還復來
烹羊宰牛且爲樂
會須一飮三百杯
*
君見ずや黄河の水は天上より來たるを
奔流して海に到り 復た回らず
君見ずや高堂の明鏡の白髮を悲しむを
朝には青絲の如きも 暮には雪と成る
人生意を得れば 須らく歡を盡くすべし
金尊をして空しく月に對せしむる莫れ
天の我が材を生ずるは必ず用有ればなり
千金は散じ盡くして還た復た來たらん
羊を烹(に)牛を 宰(ほふ)りて且らく 樂しみを爲さん
會(かなら)ず須(すべか)らく一飮三百杯なるべし
*
黄河の水が天上から注ぐのを見ることがきみにはあっただろうか。
この激流が海に流れ込むとそれまでで、二度と戻ってこないのだ。
豪邸に住んでいながらも、鏡に映った我が身の白髪を悲しんでいる者の哀れを、きみは知っているだろうか。
朝は黒い絹糸のようであった髪も暮れには雪のように真っ白になるのだ。
人生、楽しめるうちに楽しみを尽くすべきである。金色の酒樽をみすみす月光にさらしてはならない。
天が私にこの才能を授けたのだ。心配は要らない。いつか必ず用いられる日が来る。
お金の心配も無用だ。金なんぞは使い果たしてもすぐにまた入ってくるもの。
今夜は羊を煮て牛を料理して、とことん楽しみ尽くそうじゃないか。
一度飲み出したら立て続けに三百杯と行こう。それくらい、徹底しよう。さあやってくれ。飲んでくれ。
*
若い頃に「天の我が材を生むは必ず用あればなり」の句にしこたま勇気づけられたことを思い出す。おれは有用だったからこそここに人間となって生まれて来ているのだ。いつはこの天の寵愛に応える時が来る。そう思ってにたりにたりしたことがあった。さて、さぶろうはご高齢者の仲間入りをしている。応えられたかどうか。まだまだまだまだ。人生のクライマックスは案外これからなのかもしれない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます