今日は李白三昧。いい日だ。我は、今日この李白を味方に得て、万人共有の文学呼吸能力という属性の、その高さにおいて雪山ヒマラヤを凌いでいる。ま、といってもほんの一瞬限りだが。李白の詩句は詩酒である。旨酒である。いざ飲み干さん。
*
「秋浦歌」
白髮三千丈
縁愁似箇長
不知明鏡裏
何處得秋霜
*
白髪三千丈、
愁いに縁(よ)りて箇(か)くのごとく長し。
知らず明鏡の裏(うち)、
何(いず)れの處(ところ)にか秋霜を得たる。
*
三千丈もあろうかという私の白髪は、 長年の愁いによってこんなにも長くなってしまった。鏡の中にいるのは確かに自分のはずだが、全く知らない誰かを見るようだ。どこでこんな、秋の霜のような白髪を伸ばしてしまったのか。
*
いやあ、渋いねえ。白髪は我が憂いの長さ。我が憂いの長さが三千丈もある。こうなりゃもう人間国宝級だ。晩年の李白には辛酸を嘗める事件が相次いだ。失意の李白。李白はその失意をも詩にしてしまった。高邁なおいしい詩酒にしてしまった。詩人の目にとまれば明鏡も秋霜も豪勢な宝珠となって、その後数百数千年も輝き渡ることとなった。
* 1丈は約3m。3千丈なら9000m。9kmだ。隣町まではある。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます