何十年も生きてきたけど、好きなあの娘(こ)はオレから遠かったなあ。ついについに10キロ100キロ離れたままだったなあ。
もうすぐこの世が終わろうとしているけど、かわいいあの娘の傍にも寄っていけなかったなあ。指先にくらいは触れてみたかったなあ。
オレは、どうしようもないオレだったなあ。終生、愚図でとんまで間抜けな男を演じて来たなあ。
取り返しのつくことではないから、執着から外そうと思う。
なにもかも過ぎ去ったことにして、チョンにして、切り捨てて、手ぶらで、次の旅に出掛けるとしよう。
それがいい。