<おでいげ>においでおいで

たのしくおしゃべり。そう、おしゃべりは楽しいよ。

この日はまだこの男は生きていた。

2021年09月12日 07時46分38秒 | Weblog

2021年9月12日。日曜日。この日はまだこの男は生きていた。鼻から息を吸っていた。吸って吐いて吐いて吸っていた。そう、死んではいなかったのだ。

 

この男は5時に目を覚ました。障子戸の向こうが明るくなるのを待って、外に出た。秋野菜が発芽している畑を見て回った。日が東の空を明るくしていた。

 

この日この男が生きていたという事実を証明することができるのが、では、あるか。ある。このブログだ。中身の優劣を問わなければ、翻って遡って確かめることはできる。

 

いつも隣り合わせだ。死は生の隣り合わせだ。風にひらひら揺れている紅葉の葉っぱの、裏と表だ。一枚セットだ。土に落ちてもやはり生死一枚は変わらない。

 

朝方8時の気温は23・9℃。天気予報を見ると9時からは小雨が降るようになっている。8時はまだ降っていない。空が微かにその兆しを帯びている。庭の片隅では、蜘蛛がしきりに蜘蛛の巣を張っている。

 

この男は死の中で生を拾って生きている。死の中から生を覗いていると、あれもこれもがまぶしい。輝いている。蜘蛛の巣が光に助けているのさえもが美しく神秘的に見えてしかたがない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黙って黙って働く臓器たち

2021年09月12日 07時24分54秒 | Weblog

「黙って黙って働く臓器たち」     薬王華蔵

 

この男の中に心臓という臓器があって、朝から晩まで、晩から朝まで働いている。この男の中には肝臓という臓器もあって、朝から晩まで、晩から朝まで働いている。この男の中には膵臓、脾臓、腎臓、肺の臓という臓器もあって、朝晩から朝まで、晩から朝まではたらいている。

全員で全身を元気にしようとしている。全員で希望を湧かして明るく朗らかにしようとしている。というのに、この男はどうしたことか悪行の限りを尽くしている。まったく善行をしていない。この男に悪行をさせるために働いているのではないぞ、などとは、しかし、どの臓器も言わない。糾弾しない。

悪行をしようが善行をしようが関わり合わない。ただ黙っている。無私でいる。無心で働いている。ひたすらこの男をご主人様にして、この一人のご主人様を元気にしようとしている。コロナには負けられない。野原にはススキが靡き、空には羊雲が浮かんでいる。

 

このショートエッセーが9月11日、土曜日のN新聞の投書欄に掲載された。政治経済などの社会情勢に関する投書がメーンだからどうもこの個人的感想文は不似合いだ。不似合いに思われたが、掲載してもらった。なんだかちょっと居心地が悪い。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする