夜が明けました。屋根瓦には霜がびっしり降りています。どうりで寒かったはずです。日が昇ってきたら小さなポットに培養土を埋めここにズッキーニの種蒔きをします。時間と手間がかかりそうです。これがこの老人の今日の楽しみ事になります。
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鶯の初音が聞こえて来ました。上手に鳴いています。ほうほけきょ。ほうほけきょ。
鳥と虫とは鳴けども涙落ちず。日蓮は鳴かねど涙ひまなし。此の涙は世間のことには非ず。但(た)だ偏に法華経の故也。若ししからば甘露の涙とも云(いい)つべし。 日蓮「御妙判」より
救いをすべての衆生に及ぼす力を持つ法華経のことを思っただけで涙がとまらない。是は従って甘露の涙、嬉し涙と云ってもよさそうだ。鳥は鳴いてもこの甘露の涙は流せまい。日蓮はほうほけきょと鳴かないけれども、落涙千行す。この一聯の前に「未来の成仏を思ふて喜ぶにも涙せきあへず」ともある。日蓮は島流しにされ、死刑にされようともした受難の人である。
春に歌う鳥も甘露の涙を流している? 秋に歌う虫も甘露の涙を流している? 或いはそうかもしれない。ほうほけきょは「法は法華経」ではないか。「但だ偏に法華経の故也」という強い信念の日蓮を褒めているのかもしれない。