風呂屋のサウナに入った。客の少ない日曜日の夜。自分独りだった。
続いて、もう一人入ってきた。年のころも、背格好も、同じくらいだ。
二人きり。
「先に出た方が負けだ」
声に出さなくても、それは相手との共通の了解だった。
暑い。しばらくは、砂時計の砂が落ちていくのを呆然と眺めていたが、それも何度目なのか、もうよくわからない。
室内の、スポーツ実況中継だけが大声を張り上げている。熱い。
ふと、意識をそちらにやると、サッカーの東アジア杯、決勝の日韓戦だ。
あと10分ほどで日本の勝ち。
突然わきあげてきたサッカー愛と、民族感情に突き動かされ、見入ってしまった。
それは、奴も同じだった。
日本の勝ち。しかし、もう、汗はでつくし、からだは危険な状態になっている。気がする。
でも、奴は動かない。負けられない。
日本代表の、せっかくの勝利もどうでもいいほど、ヤバい状態になってきた。
思い出せるのは、サムライブルーではなく、韓国応援団、赤い悪魔の真っ赤な色だけ。
そこで、思い出したのは、漱石の三四郎の、有名な冒頭の句。「意地を通せば窮屈だ」
意地を張ってる場合じゃない。肩肘を張って生きたところで何になるのだろう?しょせん自己満足じゃないか。
もっとリラックスして、路傍の花を愛でるくらいの余裕がなければ、人生はたのしめない。意固地になって、つまらない思い込みで貴重な時間を無駄に過ごしてはいけない。
そこまで思い至った時、先に、出口のドアに手をかけていた。
助かった。
人生観が、少し変わったサウナの決闘だった。
でも負けたのは悔しいが。
続いて、もう一人入ってきた。年のころも、背格好も、同じくらいだ。
二人きり。
「先に出た方が負けだ」
声に出さなくても、それは相手との共通の了解だった。
暑い。しばらくは、砂時計の砂が落ちていくのを呆然と眺めていたが、それも何度目なのか、もうよくわからない。
室内の、スポーツ実況中継だけが大声を張り上げている。熱い。
ふと、意識をそちらにやると、サッカーの東アジア杯、決勝の日韓戦だ。
あと10分ほどで日本の勝ち。
突然わきあげてきたサッカー愛と、民族感情に突き動かされ、見入ってしまった。
それは、奴も同じだった。
日本の勝ち。しかし、もう、汗はでつくし、からだは危険な状態になっている。気がする。
でも、奴は動かない。負けられない。
日本代表の、せっかくの勝利もどうでもいいほど、ヤバい状態になってきた。
思い出せるのは、サムライブルーではなく、韓国応援団、赤い悪魔の真っ赤な色だけ。
そこで、思い出したのは、漱石の三四郎の、有名な冒頭の句。「意地を通せば窮屈だ」
意地を張ってる場合じゃない。肩肘を張って生きたところで何になるのだろう?しょせん自己満足じゃないか。
もっとリラックスして、路傍の花を愛でるくらいの余裕がなければ、人生はたのしめない。意固地になって、つまらない思い込みで貴重な時間を無駄に過ごしてはいけない。
そこまで思い至った時、先に、出口のドアに手をかけていた。
助かった。
人生観が、少し変わったサウナの決闘だった。
でも負けたのは悔しいが。