なんでそうなるのか

青森県八戸市で公務員試験塾オクトを主催する岡政也のブログです。

サウナの決闘

2013-08-16 09:33:18 | インポート
風呂屋のサウナに入った。客の少ない日曜日の夜。自分独りだった。
続いて、もう一人入ってきた。年のころも、背格好も、同じくらいだ。

二人きり。

「先に出た方が負けだ」

声に出さなくても、それは相手との共通の了解だった。

暑い。しばらくは、砂時計の砂が落ちていくのを呆然と眺めていたが、それも何度目なのか、もうよくわからない。
室内の、スポーツ実況中継だけが大声を張り上げている。熱い。

ふと、意識をそちらにやると、サッカーの東アジア杯、決勝の日韓戦だ。
あと10分ほどで日本の勝ち。
突然わきあげてきたサッカー愛と、民族感情に突き動かされ、見入ってしまった。
それは、奴も同じだった。

日本の勝ち。しかし、もう、汗はでつくし、からだは危険な状態になっている。気がする。

でも、奴は動かない。負けられない。

日本代表の、せっかくの勝利もどうでもいいほど、ヤバい状態になってきた。
思い出せるのは、サムライブルーではなく、韓国応援団、赤い悪魔の真っ赤な色だけ。

そこで、思い出したのは、漱石の三四郎の、有名な冒頭の句。「意地を通せば窮屈だ」

意地を張ってる場合じゃない。肩肘を張って生きたところで何になるのだろう?しょせん自己満足じゃないか。
もっとリラックスして、路傍の花を愛でるくらいの余裕がなければ、人生はたのしめない。意固地になって、つまらない思い込みで貴重な時間を無駄に過ごしてはいけない。


そこまで思い至った時、先に、出口のドアに手をかけていた。
助かった。

人生観が、少し変わったサウナの決闘だった。
でも負けたのは悔しいが。