名探偵

　昨日、実印をなくした、と思い、すごく焦った。なんとか、出てきたのだが。

　このような場合、たいていは前回、大切なもの、と思うあまり、そうかんたんには失くさないところ、つまり、そう簡単には手の届かないところにしまって、その場所がはて、どこだったのか忘れる、というパターンだ。
　
　絶望的な気持ちになる。己のだらしがなさを嘆き、記憶力の悪さを呪い、さらに、誰かに八つ当たりしたくなる。

　しかし、毒づいてばかりもいられない。こんな時にするべき行動は、過去の自分を推理する、ということだ。

　自分だったら、こういう場合どうするか、どんな行動をとるかをよくよく考える。
いや当たりまだ。本当に自分なのだから。

　などという自虐的なツッコミは余計だ。ここはひとつ、名探偵になった気分で、「オレならば、こういう時、ハンコはここにしまう！」と推論し、探していく。焦らずに、謎解きの妙を味わいながら。

　そして、見つけた。自分なら、こういう大切なものは、普段使っているバックの、一番奥にあるポケット、という推論は見事に当たっていた。

暗い気持ちは一挙に晴れて、誇らしい気持ちになる。さすがはオレ、完璧な推理だ!!

全く救いようのない・・・とはどうか思わないでいただきたい。こうでもしないと夜中の11時に貴重品探しなんてやってられないのだ。