『探偵コナン・ドイル』ハヤカワ・ポケット・ミステリ:2020/3/5
”A Knife in The Fog”
ブラッドリー・ハーパー(著) 府川由美恵(翻訳)
≪内容(「BOOK」データベースより≫
1888年ロンドン。『緋色の研究』を発表したばかりの若き医師コナン・ドイルは、前首相から、
巷を賑わす連続殺人事件を、シャーロック・ホームズの推理法を用いて解決に導いてほしいと依
頼された。ドイルは、ホームズのモデルでもある恩師ベル博士と、現場の下町に詳しい男装の女
流作家マーガレット・ハークネスの協力を得て、のちに切り裂きジャックと呼ばれる殺人鬼との
知恵比べに挑む。貧しい労働者階級の街イーストエンドで三人が見いだす恐るべき真相とは?
長年軍医を務めた著者のデビューを飾る痛快冒険推理。
著者について
ブラッドリー・ハーパー
元米陸軍大佐の病理学者にして〈シャーロック・ホームズ〉シリーズの長年の愛好家。2018年に
本書でデビューし、同書でアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞にノミネートされ、さらにキ
ラー・ナッシュヴィル主催シルヴァー・ファルシオン賞最優秀ミステリ賞を受賞した。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
先ず、時系列として、コナン・ドイルのホームズ物としてのデビュー作『緋色の研究』発売が1886年。
二作目の『4人の署名』が1890年。 その間の4年間 ドイルはポーツマスで本業の開業医の仕事をし
ながら歴史小説を書いています。妻のルイーズは最初の子供を妊娠中。
その頃ロンドンでは、後に”切り裂きジャック”として世界中を騒然とさせた女性連続殺人事件が起きて
いました。
そんな折、ドイルは突然前首相であるグラッドストーンから連続殺人事件の解決に力を貸してほしい
とロンドンへの招待状を受けとります。
『緋色の研究』でシャーロック・ホームズを生み出したドイルに、ホームズの様に科学的な推理によ
り事件を解決して欲しいとの意図があったのですが、ドイル自身は到底自分の手には負えないと、断
る口実に師であり ホームズのモデルでもあるジョセフ・ベル博士が手を貸してくれるなら と条件
をつけたところ ベル博士はこの件に興味を持ち あっさり承諾。
ベル博士はエディンバラ王立病院の外科医であり、ヴィクトリア女王がエディンバラに滞在中は主治
医としてもお仕えする立場にいます。
そして、ロンドン、事件現場となるイースト・エンド、ホワイトチャペルの土地や現地に住む貧民、
娼婦にも詳しい男装の女性作家マーガレット・ハークネスを案内人に加え、3人は 「三銃士」とし
て正体不明の連続殺人鬼を追う事になります。
本書のタイトルは”探偵コナン・ドイル”となっていますが、勿論探偵として”ホームズ”役はベル博士、
ドイルは助手として”ワトソン”役となり、グラッドストーンの個人秘書というウィルキンズの指示を
受け、逐一報告をしながら警察とは異なる視点から捜査を続けます。
「切り裂きジャック」に関しては、これ迄も多くの小説、ドラマの題材に取り挙げられていますし、
ホームズが活躍した時代とも重なる為、”ホームズ対切り裂きジャック”をテーマにしたパスティー
シュも幾つかありました。
実際には未だに”切り裂きジャック”の犯人に関しては未解決とされていますが、今作ではフィクショ
ンの部分を交えながら「三銃士」が犯人を追う事になります。
途中から犯人の予想はついてくるのですが、最後迄読んだ時何となく犯人の人情、犯行の動機つけが
少し弱い様な気もしますし、決着の付け方も疑問が残るところではありますが・・・(私見)
ただ、ヴィクトリア朝の当時の街の様子、ロンドン市警察とスコットランドヤードとの関係、下町
の貧民たちの悲惨な生活などが丁寧に、生き生きと描かれています。
当然物語の主役はベル博士とドイルなのですが、今作の主役は実は”マーガレット・ハークネス”な
のではないかと感じさせられます。
浅学なのでこの方が実在の人物である事を初めて知りましたが、女性参政権成立前の自立を目指
す女性にフォーカスする事によって この物語に膨らみと魅力を与えているのだと思えます。
演繹的視点で推理するベル博士を真似て ピント外れな推論を披露したり、生き生きと力強く信念
を貫き行動するマーガレットに、妊娠中の妻がありながら惹かれて行くドイルは正に”ワトソン”(笑)
最後は、ベル博士と共同で事件の謎に挑んだ経験が、そしてオスカー・ワイルドからの強力な勧
めもあり、ドイルは再びホームズ作品を手掛ける決心をするという収まりの良い決着を付けてい
ます。
尚、本シリーズの第2作目となる “Queen's Gambit”も既に発売されている様で、これはマーガレット・
ハークネスが主人公となっているとか。 この作品も高い評価をうけているそうです。
なるべく早い翻訳を期待しているところ。
実は、ベル博士とドイルの物語は以前ドラマにもなっています。
数年前にザっと書いた記事ですが、下記に
↓
※ コナン・ドイルの事件簿 : シャーロック・ホームズ誕生秘史
又ホームズのモデルに関しては、
↓
※ シャーロック・ホームズのモデルは2人?
”A Knife in The Fog”
ブラッドリー・ハーパー(著) 府川由美恵(翻訳)
≪内容(「BOOK」データベースより≫
1888年ロンドン。『緋色の研究』を発表したばかりの若き医師コナン・ドイルは、前首相から、
巷を賑わす連続殺人事件を、シャーロック・ホームズの推理法を用いて解決に導いてほしいと依
頼された。ドイルは、ホームズのモデルでもある恩師ベル博士と、現場の下町に詳しい男装の女
流作家マーガレット・ハークネスの協力を得て、のちに切り裂きジャックと呼ばれる殺人鬼との
知恵比べに挑む。貧しい労働者階級の街イーストエンドで三人が見いだす恐るべき真相とは?
長年軍医を務めた著者のデビューを飾る痛快冒険推理。
著者について
ブラッドリー・ハーパー
元米陸軍大佐の病理学者にして〈シャーロック・ホームズ〉シリーズの長年の愛好家。2018年に
本書でデビューし、同書でアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞にノミネートされ、さらにキ
ラー・ナッシュヴィル主催シルヴァー・ファルシオン賞最優秀ミステリ賞を受賞した。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
先ず、時系列として、コナン・ドイルのホームズ物としてのデビュー作『緋色の研究』発売が1886年。
二作目の『4人の署名』が1890年。 その間の4年間 ドイルはポーツマスで本業の開業医の仕事をし
ながら歴史小説を書いています。妻のルイーズは最初の子供を妊娠中。
その頃ロンドンでは、後に”切り裂きジャック”として世界中を騒然とさせた女性連続殺人事件が起きて
いました。
そんな折、ドイルは突然前首相であるグラッドストーンから連続殺人事件の解決に力を貸してほしい
とロンドンへの招待状を受けとります。
『緋色の研究』でシャーロック・ホームズを生み出したドイルに、ホームズの様に科学的な推理によ
り事件を解決して欲しいとの意図があったのですが、ドイル自身は到底自分の手には負えないと、断
る口実に師であり ホームズのモデルでもあるジョセフ・ベル博士が手を貸してくれるなら と条件
をつけたところ ベル博士はこの件に興味を持ち あっさり承諾。
ベル博士はエディンバラ王立病院の外科医であり、ヴィクトリア女王がエディンバラに滞在中は主治
医としてもお仕えする立場にいます。
そして、ロンドン、事件現場となるイースト・エンド、ホワイトチャペルの土地や現地に住む貧民、
娼婦にも詳しい男装の女性作家マーガレット・ハークネスを案内人に加え、3人は 「三銃士」とし
て正体不明の連続殺人鬼を追う事になります。
本書のタイトルは”探偵コナン・ドイル”となっていますが、勿論探偵として”ホームズ”役はベル博士、
ドイルは助手として”ワトソン”役となり、グラッドストーンの個人秘書というウィルキンズの指示を
受け、逐一報告をしながら警察とは異なる視点から捜査を続けます。
「切り裂きジャック」に関しては、これ迄も多くの小説、ドラマの題材に取り挙げられていますし、
ホームズが活躍した時代とも重なる為、”ホームズ対切り裂きジャック”をテーマにしたパスティー
シュも幾つかありました。
実際には未だに”切り裂きジャック”の犯人に関しては未解決とされていますが、今作ではフィクショ
ンの部分を交えながら「三銃士」が犯人を追う事になります。
途中から犯人の予想はついてくるのですが、最後迄読んだ時何となく犯人の人情、犯行の動機つけが
少し弱い様な気もしますし、決着の付け方も疑問が残るところではありますが・・・(私見)
ただ、ヴィクトリア朝の当時の街の様子、ロンドン市警察とスコットランドヤードとの関係、下町
の貧民たちの悲惨な生活などが丁寧に、生き生きと描かれています。
当然物語の主役はベル博士とドイルなのですが、今作の主役は実は”マーガレット・ハークネス”な
のではないかと感じさせられます。
浅学なのでこの方が実在の人物である事を初めて知りましたが、女性参政権成立前の自立を目指
す女性にフォーカスする事によって この物語に膨らみと魅力を与えているのだと思えます。
演繹的視点で推理するベル博士を真似て ピント外れな推論を披露したり、生き生きと力強く信念
を貫き行動するマーガレットに、妊娠中の妻がありながら惹かれて行くドイルは正に”ワトソン”(笑)
最後は、ベル博士と共同で事件の謎に挑んだ経験が、そしてオスカー・ワイルドからの強力な勧
めもあり、ドイルは再びホームズ作品を手掛ける決心をするという収まりの良い決着を付けてい
ます。
尚、本シリーズの第2作目となる “Queen's Gambit”も既に発売されている様で、これはマーガレット・
ハークネスが主人公となっているとか。 この作品も高い評価をうけているそうです。
なるべく早い翻訳を期待しているところ。
実は、ベル博士とドイルの物語は以前ドラマにもなっています。
数年前にザっと書いた記事ですが、下記に
↓
※ コナン・ドイルの事件簿 : シャーロック・ホームズ誕生秘史
又ホームズのモデルに関しては、
↓
※ シャーロック・ホームズのモデルは2人?
↓のドラマ、レンタルビデオを探しましたが、残念!本を予約しました、でも登場人物が多くてきっと混乱するのでしょうね、、、
ドラマご存知でしたね? ベル博士素敵でしたねぇ。
この本は正直あまり期待もせず読み始めたのですが、面白かったです。 ドラマのベル博士を重ね合わせ
て読みましたよ。確かに登場人物は結構多いです。 管轄毎の警察関係者が色々登場するので、チョット
ね。でも、ヴィクトリア朝の女性の地位や、街の描写などかなり丁寧に描かれていてパスティーシュとして
は結構楽しめる作品だと感じました(個人の感想ですが)
ドラマの日本版DVDは発売されている様ですが、あまりメジャーではないかもなのでレンタルには出てい
ないのかもしれませんね。 たまには再放送でもしてくれれば良いんですが・・・・。