知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

必要な記載事項の欠如

2006-02-26 17:41:04 | 特許法36条4項
◆H15. 3.13 東京高裁 平成13(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件条文:特許法36条4項

『上記各刊行物のこれらの記載によると,本件出願当時既に頒布されていた上記各刊行物のいずれにおいても,ポリオールについてGPC法により求めた比(Mw/Mn)の数値として,少なくとも小数点以下第一位までを有意なものとしていること,その場合,GPC法の測定条件として使用カラム等の測定条件を具体的に明示していることが認められる。
  上記1(3)で認定した知見に,上記認定の事実を併せ考慮すると,ポリオールについても,少なくとも使用カラムを特定しなければ,GPC法による測定により得られた比(Mw/Mn)の数値を,小数点以下第一位までを有意なものとすることはできないとの知見が,本件出願当時に技術常識として存在していた,と認めることができる。
(5) 訂正後発明は,分子量分布を示す比(Mw/Mn)を,GPC法により求めた場合,2以下であるポリオールであることを,要件とするものである。訂正後明細書の説明においては,訂正後発明に係る上記比(Mw/Mn)の数値を,小数点以下第一位までを有意なものとして扱っているのであるから,前記技術常識,すなわち,ポリオールについて,その分子量分布を示す比(Mw/Mn)をGPC法によって求める場合,少なくとも使用カラムを特定しなければ,比(Mw/Mn)の数値として小数点以下第一位までを有意なものとはし得ないとの技術常識によれば,訂正後明細書においても,少なくとも使用カラムを明確にすべきである。しかし,訂正後明細書には,比(Mw/Mn)を測定するGPC法について,その測定条件である使用カラムに関するものを含め,具体的な記載は一切ない。
  そうだとすると,GPC法により,比(Mw/Mn)の数値として小数点以下第一位まで有意なものとして求める前提として必要となる,使用カラムについての記載がない訂正後明細書の詳細な説明は,当業者が容易に実施できる程度には本件訂正後発明が記載されていないものという以外にない。』

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