知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

実施可能要件を満たさないとした事例

2013-02-10 20:08:33 | 特許法36条4項
事件番号 平成23(行ケ)10418
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年12月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明、八木貴美子,小田真治

2 取消事由2(実施可能要件についての判断の誤り)について
上記明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,本件発明1ないし8,12ないし16について,表面ヘイズ値及び内部ヘイズ値を所定の範囲内のものとするために,どのようなP/V比,P及びVの屈折率差,溶剤の組合せを選択すべきかについて,当業者が当該発明を実施することができる程度に記載されているとはいえない。その理由は,以下のとおりである。
(1) 発明の詳細な説明の記載内容についての検討
 ・・・
 そうすると,発明の詳細な説明の記載において示された実施例及び比較例に基づいて,当業者は,表面ヘイズ値・内部ヘイズ値が,P/V比,P及びVの屈折率差,溶剤の種類の3つの要素により,何らかの影響を受けることまでは理解することができるが,これを超えて,三つの要素と表面ヘイズ値・内部ヘイズ値の間の定性的な関係や相関的な関係や三つの要素以外の要素(例えば,溶剤の量,光硬化開始剤の量,硬化特性,粘性,透光性拡散剤の粒径等)によって影響を受けるか否かを認識,理解することはできない

ウ 以上のとおり,発明の詳細な説明には,当業者において,これらの3つの要素をどのように設定すれば,所望の表面ヘイズ値・内部ヘイズ値が得ることができるかについての開示はないというべきである(ただし,発明の詳細な説明中の実施例に係る本件発明9ないし11を除く。)。したがって,発明の詳細な説明には,当業者が,本件発明1ないし8,12ないし16を実施することができる程度に明確かつ十分な記載がされているとはいえない。

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