事件番号 平成23(行ケ)10251
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年03月14日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
2 特許請求の範囲の記載
本件審決が判断の対象とした特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。・・・。
中空軸の外周に転がり軸受の内輪を外嵌し,前記中空軸の軸端を径方向外向きに屈曲させて前記転がり軸受の内輪の外端面にかしめつけて,転がり軸受に対する抜け止めと予圧付与とを行う軸受装置であって,
・・・,
前記硬化層のかしめ側端部の位置を関係式(1)に基づいて規定することにより,内輪と中空軸との間に隙間が発生しないようにされていることを特徴とする軸受装置。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(法36条4項に係る判断の誤り)について
・・・
エ 以上のとおり,本願明細書の発明の詳細な説明の記載には,当業者の技術常識を踏まえても,硬化層のかしめ側端部の位置を本件関係式に基づいて規定することにより,内輪と中空軸との間に普遍的に隙間が発生しないこととなる理由が明らかにされておらず,当業者が本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないものといわざるを得ない。
ところで,法36条4項において,明細書の発明の詳細な説明について,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しなければならないと規定した趣旨は,発明の詳細な説明に基づいて当業者が実施できない発明に対して独占的な権利を付与することは,発明を公開したことの代償として独占権を付与するという特許制度の趣旨に反する結果を生ずるためであるところ,本願明細書の発明の詳細な説明には,当業者が本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がない以上,当業者は,出願時の技術水準に照らしても,硬化層のかしめ側端部の位置を本件関係式に基づいて規定することにより内輪と中空軸との間に普遍的に隙間が発生しないという技術上の意義を有するものとしての本願発明を実施することができないのであるから,その記載は,発明の詳細な説明に基づいて当業者が当該発明を実施できることを求めるという法36条4項の上記趣旨に適合しないものである。
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年03月14日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
2 特許請求の範囲の記載
本件審決が判断の対象とした特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。・・・。
中空軸の外周に転がり軸受の内輪を外嵌し,前記中空軸の軸端を径方向外向きに屈曲させて前記転がり軸受の内輪の外端面にかしめつけて,転がり軸受に対する抜け止めと予圧付与とを行う軸受装置であって,
・・・,
前記硬化層のかしめ側端部の位置を関係式(1)に基づいて規定することにより,内輪と中空軸との間に隙間が発生しないようにされていることを特徴とする軸受装置。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(法36条4項に係る判断の誤り)について
・・・
エ 以上のとおり,本願明細書の発明の詳細な説明の記載には,当業者の技術常識を踏まえても,硬化層のかしめ側端部の位置を本件関係式に基づいて規定することにより,内輪と中空軸との間に普遍的に隙間が発生しないこととなる理由が明らかにされておらず,当業者が本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないものといわざるを得ない。
ところで,法36条4項において,明細書の発明の詳細な説明について,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しなければならないと規定した趣旨は,発明の詳細な説明に基づいて当業者が実施できない発明に対して独占的な権利を付与することは,発明を公開したことの代償として独占権を付与するという特許制度の趣旨に反する結果を生ずるためであるところ,本願明細書の発明の詳細な説明には,当業者が本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がない以上,当業者は,出願時の技術水準に照らしても,硬化層のかしめ側端部の位置を本件関係式に基づいて規定することにより内輪と中空軸との間に普遍的に隙間が発生しないという技術上の意義を有するものとしての本願発明を実施することができないのであるから,その記載は,発明の詳細な説明に基づいて当業者が当該発明を実施できることを求めるという法36条4項の上記趣旨に適合しないものである。