知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

著作権法61条2項の推定が覆った事例

2010-04-29 18:19:23 | 著作権法
事件番号 平成18(ワ)5689等
事件名 著作権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成22年03月31日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 岡本岳

4 争点(4)(Vellum2.7 コード,Extensions コードのプログラム著作権の帰属)について
(1) 前示のとおり,Vellum3.0 コードは,本件修正契約に基づき,ファモティクがVellum2.7 コードに依拠して開発したものであるから,本件修正契約(甲2,18)及びソースコードライセンス契約(乙5の1,2)の規定により, 基本Vellum2.7 コード及びExtensions コードのプログラム著作権は,原告アシュラにおいて取得することになる。

 この点,原告コンセプトは,著作権法61条2項により,Extensions コードのプログラム著作権のうち,同法27条(翻訳権,翻案権等),28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)に規定する権利はファモティクに留保され, 原告アシュラに譲渡されないと主張する

 しかし,Extensions コードに係るプログラム著作権の譲渡を定めたソースコードライセンス契約は,その準拠法をカリフォルニア州法及び米国法と定めているから,我が国の著作権法61条2項の規定が適用されることはなく,また,カリフォルニア州法及び米国法に我が国の著作権法61条2項に相当する規定が存在するとは認められない。
 さらに,本件において,仮に我が国の著作権法の規定が適用されるとしても,上記ソースコードライセンス契約(乙5の1,2)2.6条には「原告アシュラは,・・ライセンシーに提供されるソースコードその他の品目(items)について,そのすべての特許,著作権,営業秘密及びその他あらゆる知的財産権を単独で有し,今後も依然としてそうあり続ける。」,「ライセンシー(判決注・ファモティク)は,原告アシュラに対し,Vellum Extensions に関するすべての権利,権限及び権益を譲渡する。」,「この契約期間中,ライセンシーは,特許,著作権,営業秘密の譲渡又は申請など,Vellum Extensions に関するあらゆる文書に署名して原告アシュラに交付する。」旨の規定があるところ,これらの条項は,原告アシュラにおいて,Extensions コードに係る翻案権等を含めた著作権を全面的に保有することを当然の前提とする趣旨と解されるから,著作権法61条2項の推定は覆され,Extensions コードに係る著作権法27条,28条所定の権利についても,ファモティクに留保されることなく,原告アシュラに譲渡されたものと認めるのが相当である。

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