知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許法29条2項の当業者として共通である場合

2010-05-01 12:17:58 | 特許法29条2項
事件番号 平成21(行ケ)10111
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年04月20日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塚原朋一

ウ 甲2発明と甲1発明の解体技術上の差異について
(ア) 原告は,甲2発明と甲1発明は,①当業者及び必要な資格,②技術分野,③解体技術,④構造計算方法,⑤適用法令及び監督官庁がいずれも異なる旨主張する。

(イ) まず,広辞苑(岩波書店1991年第4版発行)によれば,「建造」とは「建設造営すること。建物・船などをつくること。」,「建造物」とは,「建物・橋・塔など,建造したもの。」,「ビルディング」とは「鉄筋コンクリートなどで造った高層建築物」,「ビル」とは「ビルディングの略」,「タンク」とは「気体・液体を収容する密閉容器。」とされている。
 以上からすれば,ビルとタンクとでは,構造や素材,用途が異なるが,大きいタンクであれば「建造物」と表現することも可能であり,その意味で,ビルとタンクを「建造物」との表現でまとめても,誤りとはいえない

 このほか,審決が用いた「構造物」という語は,前記広辞苑には載っていないものの,これを「建造物」とほぼ同義で用いても,誤りとはいえないものと解される。

(ウ) 以上を前提として検討するに,確かに,ビルとタンクとでは,その構造自体は大きく異なるものであるが,それらの解体作業という観点からみた場合,ビルとタンクの構成部材等の違いから当然に発生する相違点を除き,基本的な発想において異なるとはいえないので,ビルの解体もタンクの解体も,特許法29条2項で問題にされる当業者としては共通であるというべきである(ちなみに,本件特許発明,甲2発明,甲1発明のいずれも,国際特許分類「E04G23/08」に分類されている。)。

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