知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

優先権主張の取り下げによる翻訳文提出期間の延長の主張

2012-10-14 17:21:02 | Weblog
事件番号 平成24(行コ)10002
事件名 決定処分取消請求控訴事件
裁判年月日 平成24年09月19日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子、齋藤巌
特許法184条の4第1項

1 控訴人は,要旨,パリ条約に基づく優先権を主張する国際出願の場合,優先権主張が有効か無効か確定しなければ,優先権を主張する国際出願の優先日を確定することはできず,その結果,国内書面や翻訳文の提出期限も決定していないことになると主張し,これを前提として,平成22年1月22日の特許庁長官に対する本件取下書の提出によって,平成19年1月23日を優先日とする優先権主張が取り下げられた結果,本件出願に係る優先日は,本件国際出願の日である平成20年1月23日に繰り下がり,これに伴い,本件出願についての国内書面提出期間の満了日も平成22年7月23日に繰り下がるから,本件出願は法184条の4の要件を満たす合法的な出願であり,本件各処分は違法である旨主張する。

 しかしながら,そもそも,パリ条約に基づく優先権の主張を伴う国際出願において,優先日は,期間の計算上,優先権の主張の基礎となる出願の日をいうのであり(特許協力条約2条(.)(a)),当該優先権の主張が有効であるか否かといった,指定官庁における国際出願の実体審査の結果によって,左右される性質のものではない

 このように,優先日の判断が指定官庁における国際出願の実体審査の結果に左右されるものでないことは,特許協力条約23条が,指定官庁は,同条約22条に規定する国際出願の翻訳文提出期間の満了前に,当該国際出願について実体審査を行うことを禁じ,国際出願の翻訳文提出期間が指定官庁における実体審査の開始前に設定されていることや,法184条の17が,外国語特許出願については,法184条の4第1項の規定よる翻訳文提出手続をした後でなければ,出願審査の請求(特許法48条の3)をすることができないと規定し,特許庁における実体審査を開始する条件として,同法所定の期間内に翻訳文提出手続を完了させることを要求していることからも明らかであり,この点に関する控訴人の主張は採用できない。

関連事件判決 平成24(行コ)10001  平成24(行コ)10003


下級審(関連)判決
平成23(行ウ)542
平成23(行ウ)535

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