知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

著作権法38条4項の趣旨は法務局窓口での貸出に及ぶか

2008-02-10 11:42:04 | Weblog
事件番号 平成17(ワ)16218
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成20年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所
裁判長裁判官 設樂隆一

『5 争点6(著作権法38条4項の趣旨は法務局窓口での本件貸出に及ぶか)について被告は,著作権法は,38条4項に基づいて書籍等を借り受けた者が,私的使用以外の目的で複製した場合についても,著作物の貸出しが著作権を侵害することを予定していないと解するのが相当である,と主張する。

 しかし,著作権法38条4項は,昭和59年の法改正により貸与権(26条の2)が創設されたのに伴って,改正前から行われていた図書館,視聴覚ライブラリー等の社会教育施設やその他の公共施設における図書や視聴覚資料の貸出を,地域住民の生涯学習の振興等の観点から,改正後も円滑に行うことができるようにする目的で,貸与権を制限することにしたものである。

 このように,著作権法38条4項は,貸与権との関係を規定したものにすぎず,複製権との関係を何ら規定したものではないのであって,ましてや,貸出を受けた者において違法複製が予見できるような場合にまで,貸出者に違法複製行為に関して一切の責任を免れさせる旨を規定しているとは到底解することはできない。被告の主張は採用することができない。

 また,本件土地宝典については,その利用者である不動産関係業者や金融機関の関係者が業務上利用する目的で,貸出を受けた上でこれを複写することが多いことは明らかであるから,これらの行為が著作権法30条1項の私的使用目的での複製に該当しないことも自明である。この点に関する被告の主張も採用することができない。』

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