知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

補正の基準と引用例の認定

2006-03-04 19:12:50 | 特許法29条の2
◆H18. 2.14 知財高裁 平成17(行ケ)10207 特許権 行政訴訟事件
条文:特許法29条の2

<概要>
 平成12年2月10日に設定登録された特許に対して、平成15年8月7日,本件特許の請求項1ないし3項について無効とするとの審判が請求された。特許庁は,これを無効2003-35327号事件として審理した結果,平成16年6月25日,「特許第3031856号の請求項1,3に係る発明についての特許を無効とする。特許第3031856号の請求項2に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決をしたが、審決取消し訴訟が提起された。

<争点>
 周知技術であることが直ちに開示があることにつながるとした審決の判断は違法であり、明細書中に開示があるか否かを判断するときには、明細書の補正に関する審査基準と同様に判断すべきであるかどうか。

<判示事項>
 原告が指摘する審査基準は、明細書等の補正に関する運用上の考え方を示したものであって、第1先願発明の技術内容をどのように理解するかということとは直接関係しない。
 また、審決は、単に周知技術であることが、直ちに先願明細書1にインバータの開示があることにつながると判断したものでない。

(感想)
 原告指摘の点は確かに混同しやすいポイントである。個人的には、次のように考える。
 (1)本願または引用例の明細書の記載事項を確定する際には、明細書の記載に接した当業者がどこまでの技術的事項が記載されていると認識(A)するか、かが基準であるが、(2)補正できる範囲は、明細書に記載されているに等しい事項(B)であるかどうか、かが基準である。
 そうすると、ある記載から周知のα技術もβ技術(その他のいくつかの常套手段)も利用できるというときに違いが出る。例えば、引用例の認定であれば、α技術も、β技術も認定できるということになるが、本願明細書の補正の際には、α技術だけ、β技術だけに限定して補正することはできない(なぜなら、その技術だけ限定して使うという技術思想は記載されていないから。)。
 たぶん、こういう理解が正しいのだと思う。

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