知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

団体の著作名義の表示と自然人が著作者である旨の実名の表示がある映画の存続期間

2009-10-10 19:49:19 | 最高裁判決
事件番号 平成20(受)889
事件名 著作権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成21年10月08日
裁判所名 最高裁判所第一小法廷
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 宮川光治
裁判官 甲斐中辰夫、涌井紀夫、櫻井龍子、金築誠志

(2) 旧法の下において,独創性を有する映画の著作物の著作権の存続期間については,旧法3~6条,9条の規定が適用される(旧法22条ノ3)。
 旧法3条は,著作者が自然人であることを前提として,当該著作者の死亡の時点を基準にその著作物の著作権の存続期間を定めることとしている。
 しかし,無名又は変名で公表された著作物については,著作者が何人であるかを一般世人が知り得ず,著作者の死亡の時点を基準にその著作権の存続期間を定めると,結局は存続期間が不分明となり,社会公共の利益,法的安定性を害するおそれがある。著作者が自然人であるのに団体の著作名義をもって公表されたため,著作者たる自然人が何人であるかを知り得ない著作物についても,同様である。そこで,旧法5条,6条は,社会公共の利益,法的安定性を確保する見地から,これらの著作物の著作権の存続期間については,例外的に発行又は興行の時を基準にこれを定めることとし,著作物の公表を基準として定められた存続期間内に著作者が実名で登録を受けたときは,著作者の死亡の時点を把握し得ることになることから,原則どおり,著作者の死亡の時点を基準にこれを定めることとしたもの(旧法5条ただし書参照)と解される

 そうすると,著作者が自然人である著作物の旧法による著作権の存続期間については,当該自然人が著作者である旨がその実名をもって表示され,当該著作物が公表された場合には,それにより当該著作者の死亡の時点を把握することができる以上,仮に団体の著作名義の表示があったとしても,旧法6条ではなく旧法3条が適用され,上記時点を基準に定められると解するのが相当である

 これを本件についてみるに,本件各映画は,自然人であるチャップリンを著作者とする独創性を有する著作物であるところ,上記事実関係によれば,本件各映画には,それぞれチャップリンの原作に基づき同人が監督等をしたことが表示されているというのであるから,本件各映画は,自然人であるチャップリンが著作者である旨が実名をもって表示されて公表されたものとして,その旧法による著作権の存続期間については,旧法6条ではなく,旧法3条1項が適用されるというべきである。団体を著作者とする旨の登録がされていることや映画の映像上団体が著作権者である旨が表示されていることは,上記結論を左右しない。

*旧法:昭和45年法律第48号による改正前の著作権法
原審はここ

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