知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

映画製作会社が著作者として表示された映画の著作者

2009-10-10 19:48:51 | 最高裁判決
事件番号 平成20(受)889
事件名 著作権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成21年10月08日
裁判所名 最高裁判所第一小法廷
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 宮川光治
裁判官 甲斐中辰夫、涌井紀夫、櫻井龍子、金築誠志

3(1) 旧法の下において,著作物とは,精神的創作活動の所産たる思想感情が外部に顕出されたものを意味すると解される。そして,映画は,脚本家,監督,演出者,俳優,撮影や録音等の技術者など多数の者が関与して創り出される総合著作物であるから,旧法の下における映画の著作物の著作者については,その全体的形成に創作的に寄与した者がだれであるかを基準として判断すべきであって,映画の著作物であるという一事をもって,その著作者が映画製作者のみであると解するのは相当ではない。また,旧法の下において,実際に創作活動をした自然人ではなく,団体が著作者となる場合があり得るとしても,映画の著作物につき,旧法6条によって,著作者として表示された映画製作会社がその著作者となることが帰結されるものでもない。同条は,その文言,規定の置かれた位置にかんがみ,飽くまで著作権の存続期間に関する規定と解すべきであり,団体が著作者とされるための要件及びその効果を定めたものと解する余地はない

 これを本件についてみるに,上記事実関係によれば,本件各映画については,チャップリンがその全体的形成に創作的に寄与したというのであり,チャップリン以外にこれに関与した者の存在はうかがわれないから,チャップリンがその著作者であることは明らかである。

*旧法:昭和45年法律第48号による改正前の著作権法
原審はここ

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