知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

本願発明と引用発明の作用効果の検討手法

2008-08-02 11:39:08 | 特許法29条2項
事件番号 平成20(行ケ)10062
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年07月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

8 取消事由5(本願発明の進歩性判断に関する誤り)
(1) 前記5~7のとおり,本願発明と引用発明の相違点1~3は,いずれも当業者が容易に想到することができる。そして,引用発明に相違点1~3に係る構成を加えた発明が,当業者が予測し得ないような格別の作用効果を奏するとも認められない。

 なお,本願発明が当業者が予測し得ないような格別の作用効果を奏するかどうかを判断するに当たっては,引用発明に相違点1~3に係る構成を加えた発明について判断すべきであって,審決の「…」(7頁26行~30行)との判断も同旨のものと解される。

(2) この点について,原告は,本願発明と引用発明は,その技術構成のみならず,使用する者(18歳以上対幼児やベビー),使用の目的(技術の教習対遊び)等において峻別できる異質の技術分野に属するものであるから,引用発明に基づいて本願発明の作用効果が予測できるはずはない,と主張する。
しかし,前記4(1)のとおり,引用発明の対象となる子供は幼児やベビーに限られると解することはできない。また,前記7のとおり,当業者は,使用の目的(技術の教習対遊び)に関する構成の相違(相違点3)を容易に想到することができるのであって,そうすると,引用発明に相違点3に係る構成を加えた発明は,必然的に18歳以上の運転教習を受ける者を対象とすることになる

 また,原告は,本願発明の作用効果の核心は,各発明特定事項が組み合わされたことによって,模範操縦を即座に真似して運転技術の要諦を極めて効率よく教え又は習うことができ,咄嵯の操作,瞬時の危険回避動作等を身に付けることができる,というところにあると主張するが,引用発明に相違点1~3に係る構成を加えた発明がそのような作用効果を有することは明らかであって,その作用効果をもって当業者が予測し得ないような格別の作用効果ということはできない

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