知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

「請求の理由」の補充と審判請求の定立2(最高裁)

2007-08-04 11:52:07 | Weblog
事件番号 平成15(行ヒ)353
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成17年07月11日
法廷名 最高裁判所第二小法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
(裁判長裁判官 中川了滋 裁判官 福田 博 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 今井 功)

『 3 原審は,本件請求書には,本件商標登録が15号の規定に違反する旨の記載があるのみで,具体的な無効理由を構成する事実の主張は記載されていないが,被上告人がその業務に係る商品に使用している「VALENTINO」,「バレンチノ」等の表示が我が国のファッション関連分野における取引者,需要者にとって周知であること,本件請求書に記載された請求人(被上告人)の名称中に「バレンチノ」の語が含まれていることなどの事情に照らせば,本件請求書には,本件商標は被上告人の上記表示との関係で混同を生ずるおそれがある商標である旨の無効理由の記載があるものと同視することができるから,本件審判請求は除斥期間を徒過した不適法なものではないと判断した。

 4 47条は,15号違反を理由とする商標登録の無効の審判は商標権の設定の登録の日から5年の除斥期間内に請求しなければならない旨を規定する。その趣旨は,15号の規定に違反する商標登録は無効とされるべきものであるが,商標登録の無効の審判が請求されることなく除斥期間が経過したときは,商標登録がされたことにより生じた既存の継続的な状態を保護するために,商標登録の有効性を争い得ないものとしたことにあると解される。このような規定の趣旨からすると,そのような商標は,本来は商標登録を受けられなかったものであるから,その有効性を早期に確定させて商標権者を保護すべき強い要請があるわけではないのであって,除斥期間内に商標登録の無効の審判が請求され,審判請求書に当該商標登録が15号の規定に違反する旨の記載がありさえすれば,既存の継続的な状態は覆されたとみることができる。
 そうすると,15号違反を理由とする商標登録の無効の審判請求が除斥期間を遵守したものであるというためには,除斥期間内に提出された審判請求書に,請求の理由として,当該商標登録が15号の規定に違反するものである旨の主張の記載がされていることをもって足り,15号の規定に該当すべき具体的な事実関係等に関する主張が記載されていることまでは要しないと解するのが相当である。』

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