事件番号 平成22(行ケ)10125
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年12月08日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
(1) 引用発明の認定の誤りについて
ア 原告は,引用例の発明の詳細な説明欄に記載の従来の技術(【0002】)は,引用発明としての適格性を欠く旨を主張するほか,本件審決による引用発明の認定を争っている。
イ そこで,引用例の記載を見ると,引用例が特許出願をしている発明(以下「甲1発明」という。)は,「・・・」(【0001】)ものであるが,本件審決が引用発明として認定したものは,甲1発明に先行する従来の技術であって,「・・・。」(【0002】)というものである。
・・・
ウ 特許法29条2項は,同条1項各号に掲げる発明に基づいて特許出願に係る発明が容易に発明をすることができたか否かを判断する旨を規定しているところ,同条1項3号は,「特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明」と規定しているにとどまり,それ以上に,「刊行物に記載された発明」の適格性について何ら制限をしていない。
そして,引用例(甲1)は,特許 庁作成の公開特許公報(・・・)であるから,本件出願日(平成12年6月30日)の前に日本国内において頒布された刊行物であり,引用例記載の前記従来の技術(引用発明)は,このような刊行物に記載された発明であるから,これに基づいて本願発明及び本件補正発明の容易想到性を判断することに何ら妨げはないというべきである。
この点について,原告は,平成14年法律第24号により先行技術文献の開示を義務化した特許法36条4項2号が立法される前である平成9年8月15日に引用例が特許出願されており,引用例にいう従来の技術には裏付けがないから引用発明としての適格性を欠く旨を主張する。
しかしながら,特許法36条4項2号は,出願人の有する先行技術文献情報を有効活用するために出願人による積極的な情報開示を促すものであって,そのことから,反対に,平成14年法律第24号による改正前に出願された発明の明細書であれば,そこに従来の技術として記載された発明に裏付けがないというわけではなく,平成9年8月15日に特許出願された引用例の発明の詳細な説明欄に従来の技術として記載されている引用発明をもって,本件補正発明の容易想到性について判断する根拠としての適格性を欠くということはできない。
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年12月08日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
(1) 引用発明の認定の誤りについて
ア 原告は,引用例の発明の詳細な説明欄に記載の従来の技術(【0002】)は,引用発明としての適格性を欠く旨を主張するほか,本件審決による引用発明の認定を争っている。
イ そこで,引用例の記載を見ると,引用例が特許出願をしている発明(以下「甲1発明」という。)は,「・・・」(【0001】)ものであるが,本件審決が引用発明として認定したものは,甲1発明に先行する従来の技術であって,「・・・。」(【0002】)というものである。
・・・
ウ 特許法29条2項は,同条1項各号に掲げる発明に基づいて特許出願に係る発明が容易に発明をすることができたか否かを判断する旨を規定しているところ,同条1項3号は,「特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明」と規定しているにとどまり,それ以上に,「刊行物に記載された発明」の適格性について何ら制限をしていない。
そして,引用例(甲1)は,特許 庁作成の公開特許公報(・・・)であるから,本件出願日(平成12年6月30日)の前に日本国内において頒布された刊行物であり,引用例記載の前記従来の技術(引用発明)は,このような刊行物に記載された発明であるから,これに基づいて本願発明及び本件補正発明の容易想到性を判断することに何ら妨げはないというべきである。
この点について,原告は,平成14年法律第24号により先行技術文献の開示を義務化した特許法36条4項2号が立法される前である平成9年8月15日に引用例が特許出願されており,引用例にいう従来の技術には裏付けがないから引用発明としての適格性を欠く旨を主張する。
しかしながら,特許法36条4項2号は,出願人の有する先行技術文献情報を有効活用するために出願人による積極的な情報開示を促すものであって,そのことから,反対に,平成14年法律第24号による改正前に出願された発明の明細書であれば,そこに従来の技術として記載された発明に裏付けがないというわけではなく,平成9年8月15日に特許出願された引用例の発明の詳細な説明欄に従来の技術として記載されている引用発明をもって,本件補正発明の容易想到性について判断する根拠としての適格性を欠くということはできない。